経済/ビジネス (3): ビジネス書のエッセンス(ビジネス書 書評ブログ)

2013年04月24日

「かわいい」を支える「極限のグローバル資本主義」!『グローバル経営の教科書』(日経ビジネス)



ザラ、H&Mといったファストファッションの存在は、今や「かわいい」を語るうえでは欠かすことのできない存在である。ファッション性の高い商品を安く提供する!これがファストファッション業界の特徴の特徴である。

だが、ファストファッション業界の裏側を見ると、「グローバル」と「スピード」をキーワードに熾烈な競争を繰り広げている!ファストファッション業界を「グローバル資本主義の極限の姿」として捉え、ザラ、H&M、ユニクロなどの戦略を示した本がグローバル経営の教科書 「カワイイ」を支えるファッションビジネス最前線 (日経BPムック 日経ビジネス)である。

本書の表紙を最初に見たとき、サブタイトルに『「かわいい」を支えるファッションビジネスの最前線』とあった!「なぜファッション業界が”グローバル経営の教科書”なのだろう?」とすぐに疑問がわいたきた。だが、その疑問も本書を読んですぐに解消した。世界中を巻き込んでのデザイン〜生産〜流通の仕組み、そしてスピードが半端ではない!

ファストファッション業界(特にザラ)の戦略のキーワードは「多品目」「低価格」「高回転」!そして、彼らの戦略を支えているのが高速サプライチェーンである。その「スピード」と「グローバル」な展開について最も興味を持ったのがザラである。

ザラでは販売の動きや現場の声を「コマーシャル」と呼ばれるカントリーマネジャーが捉え、デザイナーに指示をする。そして、2週間ごとに開かれる製品会議で承認されたデザインは、本社工場、あるいは中国やバングラデシュの委託先で生産し、欧米やアジアの店舗に商品を送っている。デザイン〜生産〜店舗に届くまで最短2週間というスピードだ!このスピードはH&Mの3週間、GAPの6週間と比べて圧倒的に速い。

ファッションはタイミングが命。いくら素晴らしいデザインであっても流行に乗り遅れたデザインの商品は「死に筋」となってしまう。そのため、商品の回転は目まぐるしいほど早い!そのスピードに対応するためにザラは業界最速のサプライチェーンを駆使しながら対応している。それは恐らく私のような普通のビジネスパーソンでは想像を超えた世界なのだろう。

ラフォーレ原宿近くを歩くとザラやH&Mなどのおしゃれなファッションビルが建ち並ぶ。そして店内にはおしゃれな服飾が店頭に置かれている。この光景を見ると「かわいい」を支えている姿に見える。だが、その裏側では最貧国を巻き込みながら通常では考えられないスピードで展開しているサプライチェーンが構築されているとは思いもよらかった。その姿は本書の言葉を借りれば「グローバル資本主義の極限の姿」(本書より P7)と言える!

ファストファッションのグローバル経営の姿に驚きながらも興味深く感じる内容の本である!


【本書のポイント】


■「カワイイ」を支える世界の縫製工場

 バングラデシュの首都ダッカ。道路を挟むように、1階に商店を連ねた雑居ビルがひしめき、舗装が悪い道路をクルマとリキシャが埋め尽くす。アジアの新興国によくある街角の風景。それが、夕方の午後5時に一変した。
赤、黄、オレンジ、ピンク、紫・・・・・・。色とりどりの布で髪を隠した女性が突如として街に溢れる。歩道は一気に、身動きがとれないほどごった返した。雑居ビルから出てきた女性たちは、アパレルの工場で働く従業員だ。
 女性工員の波に逆行して雑居ビルの階段を上ると、突然、視野が開けた。
 目の前に数百台のミシンが並ぶ。ずらりと並んだ作業台では、先ほどまで約600人の工員たちが黙々と作業に励んでいた。ある列で袖を取りつけ、別の列で襟を縫う。1ライン約60人の流れ作業が終着点に着くと、1枚のシャツが完成する。
 タグには「ZARA」―。この雑居ビルの1フロアは、世界トップのファストファッションブランド、ZARA(ザラ)のシャツを作る縫製工場だった。
 「我々は世界中のシャツを作っている。日本向け以外にも、欧米やアジア、あらゆる国のシャツがこのビルで作られている」と工場の経営者は胸を張る。
 バングラデシュの面積は約14万7000キロku。北海道の約1.9倍という小さな国土に、約1億4800万人が住む世界最貧国の1つだ。この国が「世界の縫製工場」としてファッション業界で存在感を高めている。
 衣料品の輸出量で、バングラデシュは中国に次ぐ世界第2位。枚数は中国より1ケタ少ないが、過去20年の伸び率は24倍で中国を上回る。輸出総量に占める衣料品の割合は実に82%だ。
 この国の繊維産業の歴史は決して古くはない。欧米企業がこの地で衣料品の生産に乗り出したのは1980年代初頭のこと。その後に韓国勢、そして中国勢が続いた。中国の賃金が高騰した2000年代以降は日系企業の進出も増えた。2008年からは「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングもこの地での生産を始めている。
 この国の工場で見かけない有名ブランドを探すほうが難しいくらいで、米ギャップやイタリアのベネトン、日本のしまむらに始まり、米ウォルマート・ストアーズや英マークス・アンド・スペンサー(M&S)、日本のイオンやイトーヨーカ堂などの総合スーパーの衣料品ブランドまで多岐にわたる。中でも、ひときわ目立つのが、スペインのザラやスウェーデンのH&M(ヘネス・アンド・マウリッツ)などのファストファッションだ。
(本書より P23〜P25)



■「ZARA」高速経営の神髄

 「好調な業績を維持するカギは、ビジネスモデルの柔軟性にある」。世界最大のファッション企業、インディックスのパブロ・イスラ会長兼CEO(最高経営責任者)は2012年9月、2012年上半期決算の説明会で言い切った。
(中略)
 強気の拡大路線を支えるのが、業界最速と言われるサプライチェーンだ。衣服をデザインしてから生産し、店舗に届けるまでに要する時間は、最短でわずか2週間。同社のチーフ・コミュニケーション・オフィサーのヘスス・エチェバリア氏は、「やろうと思えば1週間でもできる」と豪語する。
 英コンサルティング会社、プラネット・リテールのイザベル・カヴィル氏は、「デザインから店舗まで、H&Mは最短で約3週間。ギャップは約6週間かかり、インディックスは一歩抜きんでている」と分析する。
 この高速経営の実態を確かめるために、スペインに飛んだ。同社の本社は、創業者アマンシオ・オルテガ氏が1975年にザラの1号店を出店したラ・コルーニャにある。
 そこはスペインでも伝統的に貧しい、北西部のガリシア地方に位置する地方都市。これといった観光名所もなく天候にも恵まれない寂れた場所に、ガラス張りでひときわ近代的な建物があった。そこが、約3000人が働くザラの司令塔だ。
 年間2万点を超えるザラのコレクションが生み出される、デザインの現場を訪れた。広いオープンな空間の中央に陣取るのは、意外にもデザイナーではなく、ずらりと並んだコンピューター。そして、その画面を食い入るように見ながら、電話で何やらしきりに話込んでいる若い社員たちだった。
 彼ら、彼女らは、「コマーシャル」と呼ばれるカントリーマネジャーで、各自が担当する国のエリアマネジャーや店舗マネジャーたちから市場動向を収集し、在庫管理するのが仕事だ。従来のファッション業界では花形だったデザイナーたちは、そのコマーシャルたちを取り囲むように座っている。「消費者の情報こそ主役で、デザイナーは脇役」というインディックスの経営方針を物語るように。
 例えば、新商品を発売すると、その日のうちに世界の店舗から続々と販売データや顧客の声が本社に集まる。色や形が足りずに販売機会を逃していることが分かれば、コマーシャルはその商品のデザイナーにすぐ駆け寄って情報を伝え、追加のデザインの準備が始まる。新たなデザインは、2週間ごとに開かれる製品会議で承認されると、すぐに生産に移されて数週間のうちに世界中の店舗に並ぶ。
(本書より P30〜P31)



■もう1つの最強アパレルH&Mの素顔

 高収益企業としてその名がとどろくH&M(ヘネス・アンド・マウリッツ)。1947年にスウェーデンに誕生し、現在では世界48カ国で約2800店を展開している。
 2012年11月期の売上高は1兆7878億円と、スペインのインディックス(店名はZARA=ザラ)と激しいトップ争いを演じている。売上高はユニクロを運営しているファーストリテイリングの約2倍、売上高営業利益率は18%、粗利益率に至っては約59%に達している。
 日本に進出したのは2008年9月のこと。1号店は東京・銀座7丁目、音楽ホール「銀座ガスホール」跡地に建ったガラス張りのモダンなビルがそれだ。地上3階、地下1階の4フロアで、売り場面積は約1000u。近隣にはザラやユニクロの大型店もあり、出店時にはSPA(製造小売り)による熾烈な競争が話題を読んだ。
 H&Mの商品の特徴を一言で表すと「おしゃれで安い」。店構えはいかにも流行の先端をいくアパレルショップだが、女性用ブラウス2490円、男性用のワイシャツが3490円など、手頃な値段だ。女性、男性、若者、子供向け、さらにアクセサリーから靴までを販売。H&Mなら家族全員の服飾が揃ってしまう。
(中略)
 H&Mが目指しているのは、「顧客を飽きさせない経営」であり、それを支えるのは3つの割り切りだ。それは販売、物流、製造、それぞれの段階で見ることができる。
(本書より P55〜P56)


●3つの割り切り
・販売の割り切り
店舗は変化で見せる
商品は売り切れ御免

・物流の割り切り
ITを駆使した緻密な配送
納期の短縮は追求しない

・製造の割り切り
自社工場は持たない
リスクは監査で回避


【関連書籍】



グローバル経営の教科書 「カワイイ」を支えるファッションビジネス最前線 (日経BPムック 日経ビジネス)

1)本書の内容
 
 プロローグ アベノミクスの最終兵器は「きゃりーぱみゅぱみゅ」?
 Chapter 1 潜入、高速サプライチェーンの舞台裏
 Chapter 2 もう1つの最強アパレル、H&Mの素顔
 Chapter 3 ユニクロ、柳井イズムは世界を制するか
 Chapter 4 旬カジュアルで仕事スタイルは完璧!
 Chapter 5 老舗は「カワイイ」を担えるか
 エピローグ 「きゃりーぱみゅぱみゅ」からのメッセージ

2)本書から学んだこと
 ・ファストファッション業界の戦略のキーワードは「多品目」「低価格」「高回転」!
 ・「かわいい」は極限の「グローバル資本主義」によって支えられている!



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2013年04月10日

「マネジメント・メカニズム」によって課のやるべき仕事を進める基盤をつくる!『結果が出ない課長のやるべき4つの仕事』(野元義久著)



結果が出ない課長のやるべき4つの仕事』を読んみた。

「課長の仕事」というと、どんなイメージをお持ちであろうか?「毎年大きな予算を背負いながら、その予算を達成すべく、“管理者”と“プレーヤー”の二足のわらじを履きながら、日々遅くまで仕事をしている」というイメージが強いのではなかろうか?そして、シビアに成果を求められる今日、課長を取り巻く環境は厳しくなっている。

しかし、本書ではプロローグの中で「その背景には、課長の役割があいまいなまま、自分のすべきことの軸が定まっていないという現実があることを、まずは知る必要がある」と述べている。多くの組織において課長の役割とは「まずは、課の目標をクリアできるよう、ちゃんとやってもらって・・・、それからメンバーもしっかりまとめてほしい」(本書より P29)と認識されているであろう。だが、これでは「課長に期待されていることが何なのか分かりません。自分なりに課長の役目を定め、上司と認識を合わせないと、課長として活躍しつづけるのは厳しい」(本書より P29)と著者は述べている。

本書はまず課長の役割やスキルを明らかにした上で、「課長はメンバーに実践してほしい行動パターンを示し、その行動を後押ししていく基盤」となる「マネジメント・メカニズム」を作ることを提唱している。

「マネジメント・メカニズム」を簡単にいうと以下のようになる。

課の役割や目標を明らかにした上で、それを実現するための「勝ちパターン」を見える化するとともに、部下に間接的に働きかける「シクミとシカケ」をつくる。そして課長は部下が「勝ちパターン」の行動ができるよう働きかけを行う。

要は部下が「勝ちパターン」の行動ができるように「シクミとシカケ」を作りましょうということだ。

今の課長は予算達成のために自ら「プレイヤー」として動かないといけない一方、部下のフォローなど「管理者」としての働きもしないといけない。このような状況では時間がいくらあっても足りない。また、「部門」としての仕事の範囲が不明瞭であり、かつ「課長」としての役割が明確にされない状況下であれば、課長の負担が重くなるのも当然であろう。

本書は「部下が動きやすい環境を課長が作ることで、課長の負担を減らしていきましょう」という提案をしている本だ。

「シクミとシカケ」をどのように作るか?は個々の事情に応じて違うため、作るための労力と工夫が必要だが、「課長として業務の負荷をいかに減らすか?」という観点で考える上で参考になる本だと思う。


【本書のポイント】


■誰も言語化できていない、課長の役割とは?

 みなさんの会社では「課長の役割」は明らかになっていますか?
 ほとんどの方が“課長の役割”、“課長の仕事”を聞かれても、はっきりと答えることができません。
 まれに、会社で役割が定義されていることもありますが、堅い表現にとどまり、具体的な行動がイメージしにくいことがほとんどです。したがって、極端に言うと多くの方が、自分の思うまま、考え付くままに課長としての日々を過ごしてしまっているのです。
 思い返せば、私も「課長の役割」を上司から説明されたことはありませんでした。「年間の目標数字」や「会社の目指す方向性」については伝えられましたが、それを遂行するために「課長はどんな役割を担い、どんな行動をするのか」については、誰からも教えられませんでした。
 さらに言うと、課長の上司や経営者のアタマの中にその答えがあるのかというと、実はそうではありません。
(中略)
 けれども、これでは課長に期待されていることが何なのか分かりません。
 自分なりに課長の役割を定め、上司と常識を合わせておかないと、課長として活躍し続けていくのは難しいでしょう。
(本書より P28〜P29)


本書では以下の4つを課長の役割として書いている。

@課の短期目標をクリアする
Aメンバーを育てて、その力を束ね、大きな目標にチャレンジする
B結果を振り返り、仕事のやり方を改善する
C新たな収益を生み出す事業を創造する



■課長に必要な5つのスキル

 課長として、マネジメント・メカニズムを創り、機能させ続けるためには、「視点を切り替える5つのスキル」を備えておくことが必要です。
これらのスキルは、矛盾するさまざまな期待に直面する立場にある課長が、1つの視点や考え方に固執せず、別の視点や対極の視点から柔軟に考え、課長の役割を担っていくために不可欠なものです。課長に必要なスキルとしては次の5つがあります。

@「時間軸を切り替えるスキル」
A「相手目線に切り替えるスキル」
B「WHY・WHAT・HOWを切り替えて話すスキル」
C「楽観的な見方と悲観的な見方を切り替えるスキル」
D「指示・支援を切り替えるスキル」


これらのスキルは、意識して繰り返し実践することで習得することができます。一旦、身に付ければ、すでにみなさんが持っている知識や他のスキルとのシナジー効果が生まれ、課長の仕事が今までよりスムーズにできるようになるでしょう。
(本書より P39〜P40)



■「マネジメント・メカニズム」の5つの歯車

 「課長の役割」を実践するためには、「課長に必要なスキル」を備えておくことはとても大切です。
しかし、忙しい課長が、限られた時間の中で成果を出し続けるためには、スキルだけでは十分ではありません。
冒頭でもお伝えしたように、これらのスキルを使って、多くの課長がその都度状況を判断し、メンバー一人一人の仕事に個別対応し過ぎてしまうのですが、これではいくら時間があっても足りないのです。
むしろ、課長はメンバーに実践してほしい行動パターンを示し、その行動を後押ししていく環境づくりに注力しなければならないのです。
その基盤が「マネジメント・メカニズム」です。
(本書より P56〜P57)


「マネジメント・メカニズム」は次の5つの要素で構成されている。

@課としてのあるべき姿「課の役割・目標」
Aメンバーが実践すべき行動を見える化した「勝ちパターン」
Bメンバーに間接的に働きかける「シクミとシカケ」
C直接的な働きかけとしての「課長のストローク」
D勝ちパターンを実践するメンバー



【関連書籍】



結果が出ない課長のやるべき4つの仕事

1)本書の内容
 
 プロローグ
 第1章 今、本当に必要な課長の役割とスキル
 第2章 課長の仕事1課の役割と目標を明確にする
 第3章 課長の仕事2「勝ちパターン」を描く
 第4章 課長の仕事3「シクミ」と「シカケ」を創る
 第5章 課長の仕事4「課長のストローク」
 エピローグ

2)本書から学んだこと
 ・課長の役割を明確にすることが必要だ!
 ・「勝ちパターン」を持つことが必要だ!
 ・メンバーに間接的に働き掛ける「シクミとシカケ」をつくる!



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2012年12月28日

新浪改革の10年の「軌跡」と「意志」を示す本!『個を動かす』(池田信太郎著)



個を動かす 新浪剛史、ローソン作り直しの10年を読んでみました。

新浪剛史氏がローソンの社長に就任したニュースは今でも覚えています。42歳という若さでの異例の社長抜擢、しかも苦境に陥っていたダイエーに代わって筆頭株主となった三菱商事の出身ということもあって、時のマスコミはこぞってこのニュースを流しました。それだけインパクトの大きいニュースだったのだなと当時を思い起こします。

あれから10年たった今、街を歩くと「ナチュラルローソン」「ローソンストア100」など、10年前にはなかったローソンを見かけるようになりました。

そんな10年前とは変わったローソンについて、本書では新浪剛史社長という人物を通じて、そして時にはインタビューを交えながら、ローソンを作り変えた10年が描かれております。

本書のご紹介に当たって、今回は、【感想】【関連書籍】の構成で書いていきたいと思います。


【感想】

本書で書かれたテーマは大きく2つ!
1)覆し難く見える巨大な「現実」を前に、どんな意志の力が働き得るのか?
2)新浪社長とはいかなる経営者なのか?

ということです。

この2つのテーマを読みとくヒントは、巻末の「スクウェア・エニックス 和田洋一社長」のインタビューにあるように思えます。

まずは、「2)新浪社長とはいかなる経営者なのか?」について!

本書を読んで、新浪社長の経営者としての姿は、巻末の和田社長から発せられた「信じて任す」という言葉に集約されているような気がいたします。

 このインタビューを受けるに当たって、新浪さんから「この話はやめてくれ」とか「こういう話を頼む」というのは一切ありませんでした。だから今日、新浪さんについてどうお話しするかは僕に委ねられています。普通は怖いと思うものだと思いますよ。でも、彼は僕に任せてしまう。まずはこれなんです。「信じる」。信じて任せてしまう。任せられた方も、信じられたら応えなくちゃと思いますよね。彼は「信じる」ことで物事を動かしていくタイプの経営者だと思います。
(中略)
 新浪さんはヒントを教えてあげた上で「やってみろ」と。それをじっと見守ってやる。そういう感じじゃないですかね。やれると信じてあげる、ということです。だから彼の部下たちは奮い立って動くんじゃないでしょうか。
(本書より P286〜P288)


それを象徴的に表したのが、新浪社長社長のインタビューにあった『ミッション・オリエンテッド』です。『ミッション・オリエンテッド』について、本書で新浪社長は以下のように答えております。

 僕はずっと、社長の顔色を見るんじゃなくて『ミッション(使命)』で人が動く会社にならないと駄目だと思っていました。支社制、支店制を取り入れたのも、そのためです。『誰か』に考えることを委ねてしまうんじゃなくて、ミッションを達成するためにどうすればいいかを自分たちで考える組織になる。ミッション・オリエンテッド(ミッションを原動力に)会社を変えていくということです。それがしっかりと定着して、現場に『上の誰か』に従うんじゃなくて自分たちで『考える力』が備わって、僕じゃなくても『ミッション』がしっかりしていれば動く組織になたということです。
(本書より P239)


本書の一連の改革を行ってきた新浪社長の経営者としての考えは、先の新浪社長の言葉に集約されているような気がいたします。


そして、「1)覆し難く見える巨大な「現実」を前に、どんな意志の力が働き得るのか?」について。

これも巻末の和田社長のインタビューに新浪社長の凄さを垣間見るヒントが掲載されています。

 僕と新浪さんが共通しているのは創業者じゃないという点です。(中略)何が言いたいかというと、10年間社長を続けているという人は、ほとんどが創業者か創業者一族なんです。
 創業者というのはもちろん言うまでもなく大変ですよ。ゼロから作るわけですから。でも、大変なんだけれども、逆に言うと、最初から自分とフィーリングが合う奴、力のある奴をガーッと集められる。大体100人くらいまではそれでいけます。気心の知れた連中だから、トップは何も言わなくてもいいんです。500人になっちゃうとちょっと変わってきますけどね。それでも、駄目なことが露呈するまで五年、10年かかりますから、ダーッとうまくいって成功して、それから駄目になるまでしばらく問題点は見えないんです。で、ようやく駄目になっていることに気づいた時には遅い。大分腐ってから分かるので、その駄目になった手元のアセットをどうするかですよね。
 創業者じゃない経営者というのは、そこから始めざるを得ないんです。自分が作ったものじゃないから、好きなものも嫌いなものもあるんです。きっと新浪さんも、ローソンの社長になられた段階で、大好きな人もいるし、大嫌いな人もいたでしょう。気にいた仕組みもあれば何でこんなものがあるんだというシステムもあるんです。落下傘で降り立ったんですから。だから、そのアセットの「本質」が何かということをじっくり見極めることから始めたはずです。
(本書より P291〜P292)


新浪氏が社長に就任したときは、内部はダイエーの負の遺産がたくさんあり、そして資源がほとんどない状態。しかも、社内は諦感漂う雰囲気に包まれていた。そして外は業界最大手のセブン・イレブンがそびえたつ!そんなマイナスの状況の中からのスタートに対して新浪社長はダイエー時代の負の遺産と、そしてセブン・イレブンという壁に向き合いながら周囲にどのように意志と進むべき道を示してきたのか?この点を著者の池田信太郎さんは、新浪社長のインタビューを交えることで新浪社長の各取り組みに対する考えを明らかにしながら「ローソンの歩んできた道」を表しております。

特に注目したのは「ローソンは、セブン・イレブンとは一線を画した形で独自の路線を歩もうとしている」ところです。

コンビニ業界は、老舗のセブン・イレブンが道を作り、他の会社がセブン・イレブンのやり方を追随する歴史でした。そして、それはダイエー時代のローソンも例外ではありません。
しかし、本書に書かれている新浪社長の方向性は「セブン・イレブンとは一線を画した」ものでした。本書の言葉を借りるならば、セブン・イレブンの「中央集権」に対し、ローソンの「地方分権」といったように、その独自性を、本書では他社がやり方を追随してきたセブン・イレブンと対比させながら表現しています。

特に「赤いローソン」では、セブン・イレブンとは違うローソンの独自性を象徴的な形で示されています。

コンビニエンスストアの利点は「均質のサービスを、場所にかかわらず、どの店でも享受できる」ところにあります。その均質性を保つ象徴が看板なのです。それは『コンビニだけが、なぜ強い? (朝日新書)』からの引用として本書に掲載されていたセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長の言葉にも表れています。

 これからセブン−イレブンをどうしたいか−マスコミの方にしょっちゅう質問されるのですが、いつも答えはひとつです。セブン−イレブンは、いつまで経てもセブン−イレブンなんですよ。ほかのビジネスに手を広げようとは思いませんし、まして看板の色を変えようなんて思わない。奇をてらったことは一切しません。
(本書より P91)


しかし、ローソンは「ナチュラルローソン」「ローソンストア100」「ハッピーローソン」など、顧客の志向や地域性に合わせて”看板を変えて”展開をしております。本書では「赤いローソンがあってもいい」という表現を用いておりますが、本書のテーマである「覆し難く見える巨大な「現実」に対し、どんな意志の力が働き得るのか?」に対する一つの回答として示されています。それは本書の以下の言葉に集約されます。

 つまり「劣化版セブン」ではなく、ローソンという「唯一無二の存在」になる。新浪がこの10年で取り組んできたことを一言で言うならばそれだ。これが実現した時に、初めてローソンはセブンと戦うことができる。
(本書より P86)


その根底には「個を捉える」という考え方が読みとれます。それは新浪社長が「顧客」を「個客」と呼ぶことからも伺えます。本書に書かれている新浪改革を一言で表すならば、「いかに個(顧客)を捉え、個(社員・オーナー)に委ねるか?」ということではないでしょうか?「覆し難く見える巨大な”現実”」に対し、「個を捉える」ことでそれを乗り越えようとする姿は「ダイバーシティ」への取り組みにも通じるものがあり、興味深く感じます。

本書は新浪社長の作り直しを通じて、今まで見えなかった「街のホットステーション」の別の側面を示してくれる本だと思います。

※1012-12-30追記
新浪社長のTEDxSendaiでのスピーチ動画を追記いたしました。
3.11後の相馬市でのローソン再開、そして震災支援を通じての経験を踏まえて学んだことについてスピーチを行っております。なお、東日本大震災後のローソン再会については、本書の第1章”試された分権経営”にも書かれております。

【新浪剛史 TEDxSendai (日本語)】


※追記ここまで


【関連書籍】



個を動かす 新浪剛史、ローソン作り直しの10年

1)本書の内容
 第1章 試された「分権経営」-ドキュメント・東日本大震災
 第2章 迷走する経営と上場の「傷跡」-社長就任前夜
 第3章 一番うまいおにぎりを作ろうー「成功体験」を作る
 第4章 「田舎コンビニ」を強みに転じるー「ダイバーシティーと分権」の導入
 第5章 オーナーの地位を上げましょうー「ミステリーショッパー」の導入
 第6章 加盟店オーナーにも「分権」-「マネジメント・オーナー」の誕生
 第7章 「個」に解きほぐされた消費をつかむー「CRM」への挑戦
 第8章 「強さ」のために組み替えるー「BPR」の取り組み
 第9章 僕が独裁者にならないためにー集団経営体制と新規事業
 第10章 人間・新浪剛史ーその半生
 インタビュー スクウェア・エニックス和田洋一社長「起業家ではない経営者」という同類から



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