本書『これだけ! プレゼンの本質』は、今までのプレゼンの本とは一味違ったプレゼンの本だ!
プレゼンの本というと、"見せ方"あるいは"話し方"という実際のプレゼンの場での対応に重きを置いた本が多い。しかし、本書は違う。本書は「相手に自分が伝えたいメッセージを受け取ってもらい、成果に結びつける」というプレゼンの本質を起点とし、成果に結びつけるために必要なプレゼンの"戦略"を書いた本だ。
本書は「受け手の前に立ったときにはすでに勝負は決まっている」(本書より P4)と言う。どういうことか?これは自分が消費者の立場に立って考えると分かりやすい。
例えば、今あなたはiPadを欲しいと思って家電売場に行ったとする。そこで売場の店員が素晴らしいプレゼンでAndroid端末やWindows端末の商品説明をしたところで、あなたは説明された商品を買うであろうか?大方の答えは"NO"であろう。なぜなら「買い手が求めているものと、売場の店員が説明しているプレゼンの内容が一致していないから」である。これは分かりやすく示すために書いた例ではあるが、実際のビジネスシーンではもう少し複雑だ。"意識決定者"にメッセージを受け取ってもらう必要があるが、
・意思決定者は誰なのか?
・その意思決定者は心の奥底では何を求めているのか?
を考慮しながらプレゼンの準備を行わなければならない。逆に言うと、それを怠ると、選ばれることはない。本書で「戦略が勝敗の90%を握る」と言っているのは、このためである。
本書が重きを置いている思考は以下の3点である。
「あなたは聴き手にどういう価値を提供できるのか?」
「そもそも聴き手が求める価値とは何なのか?」
「その価値を最大化するにはどうしたらよいのか?」
そして、この考え方を”選ばれるための価値創造戦略”として本書で提示しているのが”ダイヤモンド・プレゼンテーション戦略”である。”ダイヤモンド・プレゼンテーション戦略”の詳細は本書に譲るとして、この戦略は3つのステップから構成される。
■ダイヤモンド・プレゼンテーション戦略の3ステップ
@コンセプト設計−価値を深堀りする
受け手が得られる価値が最大化するように提案内容を考える。
Aシナリオ設計−価値を深堀りする
@の提案の価値が、受け手にきちんと伝わるようなシナリオをつくる
Bスタイル設計−メッセージを届ける
Aのシナリオを魅力的に語ってきかせる
(本書より P36〜P37)
上記の”ダイヤモンド・プレゼンテーション戦略の3ステップ”は、”ビジネスモデルの構築”や”パーソナルブランディング”にも相通ずるものがある。以下は、”ビジネスモデル構築”や”パーソナルブランディング”で使われる「ビジネスモデル・キャンバス」に上記の3つのステップを組み合わせてみた結果である(組み合わせはあくまでも私の独断と偏見で行なっております)。
例えば”@コンセプト設計”のダイヤモンドの原石に相当するのは、「ビジネスモデル・キャンバス」の”キーアクティビティ”(自分達の活動)や”キーリソース”(自分達の資源・能力)である。そしてそれを価値としての最大化に相当するのが「ビジネスモデル・キャンバス」の”与える価値”である。また、”ターゲティング”は「ビジネスモデル・キャンバス」の”顧客”に相当する。そして、”Aシナリオ設計”は”キーリソース”・”キーアクティビティ”・”顧客”をインプットとし、”与える価値”でコンセプトフレーズに導いた結果を更に”与える価値”として分かりやすいメッセージシナリオをつくる。そして”スタイル設計”では「ビジネスモデル・キャンバス」の”チャネル”で顧客へのメッセージの届け方を定義する。
逆の言い方をすれば、本書の内容は”ビジネスモデル構築”や”パーソナルブランディング”にも役立つことができる。いや、”選ばれるために必要なプレゼン戦略”ということを考えると、”ビジネスモデル構築”や”パーソナルブランディング”に帰結する内容と言える。
本書を”プレゼンだけの本”と捉えるのはもったいない。”ビジネスモデル構築”や”パーソナルブランディング”にも活用の幅を広げることで、本書のテーマである”選ばれる人”になるための戦略を更に役立てることができるのではないかと思う。
【本書のポイント】
■ビジネスとはオーディションの連続
ビジネスでは、私たちはいつも選別の目にさらされます。
そもそも、ビジネスそのものが競合他社との、選ばれるかどうかの戦い。「競合他社ではなく、御社に決めました」と、そう言ってもらえた数がビジネスを大きくしていきます。だから、企業は自社がお客さんに選んでもらいやすいように、あらゆる手立てを打ちます。
(中略)
まさに、ビジネスは選別というオーディションの連続です。大きなものから、小さなものまで、様々なオーディションに囲まれ、そこで選ばれることが求められる。あなたも、ここ数日を振り返れば自分がたくさんのオーディションにかけられていたことに気づくでしょう。
そして、私はこの大小様々なオーディション場面すべてがプレゼンであると考えています。あらためて、この書籍におけるプレゼンテーションの定義を明確にしておきましょう。
【プレゼンテーションとは、受け手から選ばれるために、価値を提供すること】
商談だって、プレゼンテーション。部下をその気にさせる働きかけだってプレゼンテーション。社内の企画提案もプレゼンテーション。
そして、それらの場面を成功に導く”選ばれる力”がプレゼンテーション力です。
そして、このプレゼンテーションの場面では、いつも選ばれる人が存在します。選ばれる力を持った人だけが圧倒的高確率で選ばれる。一方で選ばれない人は、生き残れるギリギリの勝率の中で苦しいビジネスを強いられます。
(本書より P13〜P15)
■「コンセプト設計」を構成する4つの鍵
@バリュー
価値そのものに注目し、提案そのものを変えずにいながら、その価値を最大化する
・機能レベル
・効用レベル
・未来レベル
Aターゲティング
誰にメッセージを届けるかを見極め、相手が求めていることにチューニングを合わせる
Bポジショニング
自分の優位性をアピールできるように独自の強みを見つける
Cコンセプトフレーズ
価値を受け手に届けるために、シンプルなコンセプトフレーズにまとめる
■「シナリオ設計」を行なう3つの武器
@構造化
伝えたいメッセージを整える
・捨てる
・分ける
・配置する
Aイメージ化
受け手の頭の中に絵を描くほど具体的に語る
・COP(クローズアップワンパーソン)
・対比
・たとえ話
B感情のデザイン
人を動かす原動力となる感情にアンテナを向ける
■「スタイル設計」でメッセージを届ける
自分のスタイルをPPMに落とし込む
PPM(プレゼンテーション・パーソナリティタイプ・マトリクス)
・縦軸:ライト(Light)⇔ヘビー(Heavy)
・横軸:カーム(Calm)⇔インテンス(Intense)
【関連書籍】
これだけ! プレゼンの本質 1)本書の内容 序章 選ばれるプレゼンターへの道 第1章 ダイヤモンド・プレゼンテーション戦略とは 第2章 選ばれないプレゼン 4つの間違い 第3章 ステップ1 コンセプト設計−ダイヤモンド級の価値ある提案を掘りあてろ 第4章 ステップ2 シナリオ設計−ダイヤモンドを輝かせるように価値を磨く 第5章 ステップ3 スタイル設計−ダイヤの指輪を渡すようにメッセージを届ける 2)本書から学んだこと ・ビジネスとはオーディションの連続! ・ビジネスに必要なのは”選ばれる力”である! ・「ダイヤモンド・プレゼンテーション戦略」は幅広い分野で活用できる! |
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タグ:表現/プレゼンテーション