マーケットの創造に突き進む「独自のこだわり」を持った経営者!『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか』(ヴォルフガング・ヒュアヴェーガー著): ビジネス書のエッセンス(ビジネス書 書評ブログ)

2013年11月30日

マーケットの創造に突き進む「独自のこだわり」を持った経営者!『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか』(ヴォルフガング・ヒュアヴェーガー著)



お店や自動販売機などでよく見かけるレッドブル。赤い雄牛と天使の翼のロゴを施したこの飲料は、創業者のディートリッヒ・マテシッツ氏が大正製薬の「リポビタンD」にヒントを得てタイのエナジードリンクをベースに考案した商品だ。世界165カ国で約52億本も販売されているこのドリンクは、エナジードリンクにおける世界シェアの約70%を占めている。

しかし、これだけ世界規模に展開している企業でありながらも、その企業の実像はあまり知られていない。よく言われているのは「マーケティングが画期的」ということだけである。アルプスの麓に本社を構えるこのオーストリアの企業の、そしてディートリッヒ・マテシッツ氏の実像に迫った本が本書レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのかである。

それにしても意外なことばかり書かれていた、エピソード満載の楽しい本である。

最初に興味をひいたのは、マテシッツ氏がエナジードリンク産業に飛び込ませたキッカケである。

「キッカケはリポビタンD」と先に書いたが、これは「リポビタンDという製薬に惚れこんだから」という意味ではない。当時ユニリーバに勤めていたマテシッツ氏は、『ニューズウィーク』誌に書かれていた一つの記事に興味を持った。それは日本の高額納税者リストに関する記事である。1位に掲載されていたのがソニーやトヨタといったグローバル企業の経営者ではなく、大正製薬という彼が聞いたことのない企業の経営者であった。そして、リポビタンDというエナジードリンクで高額納税者になれることに感銘を受けていた。経済的に、そして時間の自由を手に入れたい彼にとって、この記事は大いに刺激になったに違いない。

もちろん、日本でお馴染みの「リポビタンD」がキッカケというのも我々日本人にとっては意外な気もするが、実は私が興味を持ったのは何気ない記事からヒントを得て市場を観察するマテシッツ氏の嗅覚である。普通であれば「へえ?」で終わってしまうものだが、そこに「巨大な金儲けのチャンスがある」と思ったところに人並み以上の嗅覚の持ち主と感じた。そして、その嗅覚はレッドブルという企業の独自性を発揮しているように思う。

レッドブルの特徴は「マーケティングと販売に特化した会社」ということだ。マーケティング志向の会社は数多く存在する。だが、レッドブルの場合は徹底度が違う。売上の3分の1を広告とブランド育成にかける。これだけの費用を広告とブランド育成にかける企業は他にはあるまい。「レッドブルのための市場は存在しない。我々がこれから創造するのだ」(本書より P22)という言葉に象徴するかのごとく、市場を創造するために巨額の費用を費やしてきた。そして、レッドブルが重要視していることが「体験を売る」ということである。このため、イベントは代理店に丸投げせず、全て自社で行う。それは販売に携わる社員よりもイベントに従事している社員の方が多いことからもレッドブルの姿勢がうかがえる。「すべてはマーケティング」という言葉にも代表されるように、消費者の関心と繋がりを保つために命がけで行ってきたことだ。なぜ、そこまでしてマーケティングにお金をかけるのか?それは「ブランド商品にとって最も危険なのは関心をもたれないことだ」(本書より P36)という言葉からも推しはかることができるであろう。

一般的には「マーケティングに巨額のお金を費やす」と書くと派手なイメージを持たれるが、「銀行にだけは借金するな」(本書より P76)という言葉に代表されるように、経営姿勢はむしろ堅実といってよい。また、スポーツ産業にも進出はしているものの、長期的に育てるというスタンスで一貫している。会社を上場させないという姿勢にも、マテシッツ氏のスタンスがよく表れている。アメリカの創業者は自らが創業した会社を上場させることで創業者利益を得る傾向が強いが、マテシッツ氏にはそのような考えは全くない。株も売却する気もない。そして、「セレブとのパーティーは最も意味のない時間つぶし」(本書より P276)と言い切り、「男と男の握手には何よりの価値を持っている」(本書より P276)というこだわりを持つ考え方。そういう意味では「なりふり構わず」ビジネスのために何でも行うアメリカ人の経営者とは違った気質を持っている。

マーケットを創造するためなら伝統を壊すこともいとわない姿勢、しかし経営に対しては保守的とも思える姿勢で臨む。同一人物とは思えないマテリッツ氏のギャップの表れを読みとることができるのが面白い。スタートアップの本というとシリコンバレーを連想しがちだが、ヨーロッパ人特有の伝統的なこだわりを持つ考えが表れたスタートアップの本というのもシリコンバレーとは違った味わいがあって面白く思う。


【本書のポイント】

 「レッドブルのための市場は存在しない。我々がこれから創造するのだ」(本書より P22)

 「ブランド商品にとって最も危険なのは関心を持たれないことだ」(本書より P36)

 「銀行にだけは借金するな」(本書より P76)

 「私たちはマーケティングのプロです。潜在能力があるにもかかわらずこれまで日の目を見ることのなかったブランドを、眠りから覚ましてやりたいのです。私たちの強みは問題解決能力です。すでに確立しているものの管理ではありません」(本書より P79)

 「伝統的な価値をすべて疑う必要はありません。そのなかには人生にとって必要なものもたくさんありますから」(本書より P249)

 「互いに競い合い、だまし合うことがビジネスだ、とは考えていません。努力と誠実さによっても成功を収めることができるのです」(本書より P250)


【関連書籍】



レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか

1)本書の内容
 
 序章 レッドブルとは何者か?
 PARTI 52億本への道
 PARTII スポーツ・マーケティング
 PARTIII レッドブル帝国の正体
 PARTIV 創業者の横顔
 終章 ブルのこれから


2)本書から学んだこと
 ・市場は創造するためにある!
 ・最も危険なのは関心を持たれないこと!
 ・努力と誠実さによっても成功を収めることができる!



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posted by まなたけ(@manatake_o) at 00:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | マーケティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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