「核となるメッセージ」を「適切な言葉」で伝えたとき、成長を促すキッカケとなる!『部下を育てるリーダーのレトリック』(中竹竜二著): ビジネス書のエッセンス(ビジネス書 書評ブログ)

2013年09月16日

「核となるメッセージ」を「適切な言葉」で伝えたとき、成長を促すキッカケとなる!『部下を育てるリーダーのレトリック』(中竹竜二著)



「レトリック」
この言葉を目にしたとき、どんなイメージを持ったであろうか?

「言葉巧みに操っている」といった、ネガティブなイメージを持っている方が多いのではなかろうか?実は私もその一人である。そのため、今回取り上げた本書部下を育てる リーダーのレトリックの表題を読んだとき、「なぜレトリックという言葉をタイトルに用いたのだろう?」と思ってしまった。

しかし、それは本書のプロローグを読んだとき、自分の浅はかな考えだと気が付いた。本書のプロローグ「レトリックはリーダーの必須科目である」には以下のように書かれている。

 「レトリック(rhetoric)とは、古代ギリシアに始まった効果的な言語表現の技術であり、日本では「修辞学」と呼ばれる。歴史を振り返れば、皇帝、武将などが必ず学ぶ教養科目の1つであった。側近の部下はもちろん、時に民衆や一兵卒にもわかりやすく物事を伝え、納得させ、人を動かすことが重要だった彼らにとって、必須のスキルだったのである。
 しかし、近代には衰退し、今やレトリックという言葉は単に表現に技巧を凝らすこと、あるいはよりネガティブに、人を言葉で煙に巻くといった意味合いで使われることがある。ビジネスの現場では特に、「雄弁は銀、沈黙は金」「背中を見て学べ」というように、言葉を巧みに操り、語ることを軽視する傾向にある。むしろ、今やレトリックはリーダーの必須科目だと私は思う。
(本書より P4)


本書のタイトルになぜ「レトリック」という言葉を用いたのか?それは「言葉を尽くしてメンバーを納得させ、心と体を動かしていくのがリーダーの役割」(本書より P6)であり、そのことを象徴的に表す言葉が「レトリック」であるからだ。

「言葉を尽くしてメンバーを納得させ、心と体を動かしていくのがリーダーの役割」と先に書いたが、その重要性は我々の日常を考えると想像に難くない。

例えば、上司が「xxの件に関するレポートをまとめておいてくれ」とその一言だけで部下に指示をしたとする。部下は自分なりに解釈をし、作成をしたレポートを上司に提出した。しかし、上司はそのレポートに対して「俺が求めているものと違う!書き直し!」と作成したレポートを突き返してしまった.....一つの例としてあげたが、これに似たような光景はよくあると思う。

従来の組織では「そこまで言わなくても分かるだろう」という暗黙知がまかり通っていた。しかし、団塊の世代、バブル世代、氷河期世代とそれぞれが就職した時代の背景に伴い、また時を経るにつれ、価値観が多様化した。当然、世代間における考え方も違う。そのようなときであるからこそ「明確な言葉で伝えること」が必要とされる。特にリーダーにおいてはそのことが強く求められている。

本書は「自分の伝えたいことを整理し、飾り立ての言葉ではなく『適切な言葉』でメッセージとして部下に伝える」ためにはどうすればいいのか?を著者の経験を交えながら書かれた本である。いざ、「適切な言葉でメッセージを伝える」となると本当に難しい。その言葉がその状況において適切であるかどうか、また、他に適切な言葉はないだろうか?と真剣に考えないといけないからだ。そのため、本書に書かれている内容が必ずしも適切であるとは限らない。だが、「早稲田大学ラグビー部史上、最もオーラがない監督」と評されながらも同部を率いて2度の日本一に導いた著者が「助けてくれた」と言っているのが「言葉」であり「レトリック」である。恐らく、同部で監督として率いていたときは選手との対話の繰り返しであったであろう。最初は対話しても選手から反発があったものの、対話の繰り返しの中で自分の伝えたいことを「核となるメッセージ」として言葉を研ぎ澄ませ、何度も伝えることによってチームが形成され、大学日本一という結果になったのだと本書の文章から想像される。

また、著者は「フォロワーシップが大事」と常々言っているように、リーダーよりもその周りを支える人の重要性を説いている。そして、リーダーの役目は「周りの人を生かすこと」であるとも言っている。そのために必要なのが「部下に伝えたいメッセージ」であり「適切な言葉」である。そして、そのために「レトリック」という技術を磨く必要がある。このように書くと「言葉巧みに部下を操る」と思われるが、本書で伝えたいことはそういうことではない。相手と対話するなかで自分で考えるヒントを与え、放っておいても成長するためにはどうすればいいのか?それは相手の懐に入り、対話を通じて心が触れ合うなかで成長すると著者は述べている。著者の経験した状況から行なった対話が学生たちにどのように伝わったのか?本書を通じてそのことに触れることにより、「自分だけのレトリック」を生み出すヒントになるのではないかと思う。


【本書のポイント】


■苦手なことはやらなくていい

 部下がなかなか成長しない。頑張りが足りない。そんなふうに、フラストレーションを感じる上司は少なくないだろう。どんなに「頑張れ」と言ったところで、部下は簡単には変わらない。部下にしてみれば、すでに「十分頑張っている」と思う。だから、「頑張れ」という言葉は意味を持たない。それ以上どう頑張っていいのかわからない。そんな部下に、上司は新たな気づきを与える言葉をかけるべきだ。
 そもそも、部下に成長のきっかけを与えようとするとき、上司の側に「営業はこれ」「経理ならばこれ」「エンジニアだったらこう」というステレオタイプな「理想像」が刷り込まれてはいないだろうか。上司にそうした刷り込みがあると、部下もその期待に応えることが自分の務めだと思い込むようになる。
(中略)
「苦手なことはやらなくていい」。これが、部下を思い込みから解放する呪文になる。
 部下の成長を思えば、苦手なことを克服させようと思うのも親心には違いない。しかし、今の若者は「ゆとり」と言われる教育の中で、「個性の発揮」を常に求められてきた。いじめ問題の影響もあるかもしれない。人前で苦手なことをすることに、極端な拒否反応を示す人が上の世代より多いのは間違いない。
 「君が持つ『らしさ』、スタイルを生かして頑張れ」。そう激励するだけで、彼らは大きなストレスから解放され、ポシティブに仕事や役割に向かうようになる。
(本書より P20〜P23)



■瞬間の強みを成果に変えるのが上司の役割

 仕事でも、同じことが言えるはずだ。企画案を作るのは苦手だが、人脈やITを駆使した情報収集能力だけは、他の誰にも負けない。契約の詰めは甘いが、顧客の懐に入るのがうまい。会議での発言は少ないが、結論に導く大事な一言を発する−
 これらは組織にとっても、本人にとっても十分な強みになり得る。「具体的な成果に結びついていない」という反論もあるだろう。もちろん、ただ瞬間、瞬間の強みを見つけただけで成果にはなり得ない。それを成果に結びつけていくのが上司の役割だ。
(中略)
 ポイントを整理してみよう。
 上司の役割とは、まず「瞬間」を切り取って、強みを自覚させること。それには本人に「『俺ってイケてる』って思える瞬間は何か?」と問いかけること。そのうえで、仕事ぶりを振り返ってもらい、「その瞬間こそ、本当に自分の強みだ」と腹に落とすこと。
 「瞬間芸」に終わらせず、どうしたら成果に結びつけることができるのか、同じような強みを持つ人の活躍の例を探してきたり、その生かし方を一緒に考えたりすることも大事だ。そして、その強みを生かせるようなアサインをする。
 情報収集能力だけは、他の誰にも負けないという部下であれば、企画書がうまく作れる人と組ませ、プレゼン資料に落とす。部署全体のパフォーマンスは上がる。そして、ともに仕事をすれば、お互いのスキルを学び合い、それぞれが成長する。組織の力を最大化する掛け算の妙とは、部下一人ひとりの「瞬間芸」が見えてこそ実現できるものだ。
(本書より P30〜P31)



■スキルは「点」、スタイルは「線」

 仕事で突き抜けようと思ったとき、企画であれば情報収集のためのネットワークを作る、営業でセールストークを磨くといったスキルアップに目を奪われがちだ。しかし、現実にはスキル以上に習慣や基本的な立ち居振る舞いが大切だと私が思う。
 私はよくスキルは「点」であると説明している。点のスキルは、そのスキルが発揮できる瞬間にしか役に立たない。逆に第1章で問いた「スタイル」は「線」だ。スキルを含めた点が線で結ばれたとき、初めてどんな場面でも力を発揮できるようになる。
 言い換えれば、勝てる組織が持っているのは勝てるスタイルであり、成果が出せる人が持っているのも、成果が出せるスタイルだ。
「仕事のなかで突き抜けた成果を出そうと思ったとき、どんな考え方、習慣、振る舞いが大切なのかを考えよう」と部下を促すといい。「成果を出せる自分」は、どんなあいさつをするだろう。会議前にはどんな準備をするだろう。会議ではどんな発言をするだろう。似をしようということでは決してない。人によってスタイルは必ず異なる。
 おとなしいが、いつも礼儀正しく、人のことを気遣うコミュニケーションによって成績を伸ばす営業マンがいる。がむしゃらで言っていることはめちゃくちゃだけれど、人を巻き込んで面白いモノを作っていく企画マンもいる。個性はまったく異なるが、その人なりのスタイルを持っているのだ。
(中略)
 成果を出せる、その人らしい振る舞いをいかに引き出すか。それも上司の腕の見せどころである。
(本書より P100〜P101)



■ピカピカの才能はなくても、誰もが個性を持っている

 仕事でも、ピカピカの才能を持った人に出会うことがある。会議などをしていて、泉のように新しいアイデアが湧いてくる人。多くの人を巻き込み、行動に駆り立てるリーダーシップを持つ人。こうした人に会うと、一流のオーラに圧倒される。
 しかし、三流の人も確実に輝くことができる。一流の人のようなピカピカの才能ではないけれど、他の人にはない個性を必ず持っているからだ。その個性を生かすゴール設定をすれば、どんどん磨かれていく。
 爆発的には売れないけれど、コンスタントに売れる商品を開発しよう。絶対ミスをしない経理マンになろう−。現実的な目標設定の方法はいくらでもある。
 同じ部署のなかに一流のプレーヤーがいると、他の部下が「俺とあいつは出来が違うから」と腐ってしまうことがある。そんなとき、上司が「君も頑張ればあいつのように活躍できる」などと言っても無意味だ。部下それぞれの強みや個性を発見し、それに磨きをかけるストーリーを描くことが上司の役割である。
(本書より P143)



■未来の自分と話をしよう

 失敗を振り返る目的は、未来をいかによくするかを考えることにあるはずである。しかし、実際には「振り返り」というと、「ああすればよかった」「こうすればよかった」と過去にやってしまったことの回顧だけになりがちだ。これは最悪である。未来の話をするにしても「次はこうしたほうがいいよね」というレベルで止まっては、意味がない。そこに欠けているものは何か。未来のゴールと失敗した今をつなぐ視点である。
(中略)
 大口顧客を競合に取られた。そのとき、「ああすればよかった」「次はこうしよう」で終わらせてはいけない。もう一度顧客を取り戻す、別の顧客を獲得する自分をイメージさせ、そのために「今、何をすべきか」を明らかにする。そこまでして初めて、失敗を具体的な学びに落とし込むことができる。
(本書より P148〜P149)



■チャンスとピンチは解釈の違いだ

 競合に大きな仕事を取られてしまった。あと1週間で期末なのに、目標に対してまだ8割しか売り上げが立っていない−。
 こうした状況は、組織にとってピンチだと思うかもしれない。そして、メンバーが浮足立ったり、モチベーションを下げたり、ともするとパニックに陥って冷静さを書いたりしてしまうかもしれない。
 しかし、本当にピンチはピンチだろうか。
 サッカーのゴール前のフリーキック。守る側にとって明らかにはピンチなのに、ゴールキーパーが不敵な笑みを浮かべていることがある。その瞬間、「ああ、このキーパーはゴールを阻止するな」と思うとそうなる。見ている側にとってはピンチでも、彼にとっては決してピンチではないのだ。むしろ、ゲームのムードを変えるチャンスと思っているかもしれない。
(中略)
 競合に顧客を取られそうだ→競合を徹底的に研究するチャンスだ
 1週間であと1億円売らなければならない→商品とサービスを見直すチャンスだ。
 チャンスへの変えようはいくらでもある。「ピンチとチャンスは解釈の違いにすぎない」と部下を鼓舞することによって、モチベーションダウンや浮足だった空気を防ぐことができる。
(本書より P196〜P199)



【関連書籍】



部下を育てる リーダーのレトリック

1)本書の内容
 
 プロローグ レトリックはリーダーの必修科目である
 第1章 気づきを与える言葉
 第2章 部下の成長を促す言葉
 第3章 チーム力を高める言葉
 おわりに

2)本書から学んだこと
 ・「レトリック」はリーダーの必須科目!
 ・伝えたいメッセージを「適切な言葉」で発したとき、相手に”気づき”を与える!
 ・「自分だけのレトリックを生み出す」習慣をつくることが重要!



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posted by まなたけ(@manatake_o) at 17:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 人材育成 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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