アマゾンをつくった「ITエイリアン」の実像に迫る本!『ワンクリック』(リチャード・ブラント著): ビジネス書のエッセンス(ビジネス書 書評ブログ)

2013年01月03日

アマゾンをつくった「ITエイリアン」の実像に迫る本!『ワンクリック』(リチャード・ブラント著)



2012年10月25日、一つのニュースが日本を駆け巡った。電子書籍の本命・アマゾンが運営する「Kindleストア」のオープンである。だが、そのオープンまでは困難を極めた。コンテンツを提供する出版社との交渉は難航した。出版各社のアマゾンに対する警戒感があったからである。逆の言い方をすると、「地球最大の書店」の影響力が、それだけ大きいことを物語っている。この「地球最大の書店」、いや「地球最大の小売店」を作ったのが、アマゾンのCEOであるジェフ・ベゾスである。

だが、アマゾンを頻繁に利用する方でも、ジェフ・ベゾスという名前を知っている方は少ないのではなかろうか?かく言う私もジェフ・ベゾスの名前を聞いたことはあるが、アマゾンのCEOということ以外はよくは知らない。ITの世界では重要人物でありながらも謎めいた人物というのが私の印象だ。そんな謎めいたジェフ・ベゾスの生い立ちや人物像、そして考え方などを分かりやすく書かれた本がワンクリック―ジェフ・ベゾス率いるAmazonの隆盛である。

本書の位置づけは、巻末に書かれた滑川海彦さんの解説に書かれた以下の文章が分かりやすいので、これを紹介したい。

 アマゾンの創業者、ジェフ・ベゾスは現代社会のIT化を推進した点で、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ、アップルの創業者のスティーブ・ジョブズ、グーグルの創業者のラリー・ペイジとサーゲイ・プリンに匹敵する重要な人物ではないかと思うようになった。しかし本人がマスコミに登場することを避けてきたこともあり、これまでベゾスについての読みやすい伝記はあまり出ていない。本書はこの重要人物を理解するのにかっこうの読み物だと思う。
(本書より P261)


さて、本書を読むと
「キューバ系の養父に育てられた」
「アマゾン創業前にウォールストリートでキャリアを積んだ」
など興味深い話しが多い!
特に
「金融取引システムを提供しているD・E・ショーの設立者であるデビッド・ショーによってインターネットの存在が知らされた」
「ウォールストリートの関係者が案件を選ぶ際に使われる『ディールチャートフロー』を使用してインターネット小売店で販売する商品に”本”を選び出す」
など、ウォールストリートでの経験が、その後のベゾスの人生に大きな影響を与えるキッカケとなったのも面白い。

とはいえ、やはり本書に書かれたベゾスの特徴を挙げるならば
「顧客第一主義で事業を進める」
そして
「他人が驚くようなイノベーションで一歩先をゆく」
という姿勢だろう。

「顧客第一主義で事業を進める」という姿勢として「カスタマーレビューの掲載の仕方」を挙げたい。
アマゾンのレビュー欄を見ると、ネガティブなレビューも多い。これを掲載しているのも「顧客のために」というアマゾンの姿勢が現れているからである。その理由は本書の以下のベゾスの言葉に表れている。

 モノが売れなければ儲からないのに、ネガティブなレビューをサイトに書けるようにするなど、なにを考えているのだと言われたのです。でも、我々としては、何を買うべきか顧客が判断しやすくすればするほど多くが売れるはずだと考えています。
(本書より P120)


そして「他人が驚くようなイノベーションで一歩先をゆく」という姿勢が端的に現れているのは、やはり「キンドル」であろう。
「会社設立の基礎になった紙製品をこれほど簡単に捨てられるのも、ベゾスなら驚くに値しない」(本書より P183)と書かれている。このことからもベゾスの「破壊的イノベーター」の姿勢が伺える。

そんな”普通の人では想像できないことをさっとやってのける”ベゾスを、本書では関係者の言葉を用いながら「善意の火星人」「1万年先を見据えるITエイリアン」と地球外の生物で表現している。それはベゾスが高校時代から宇宙に興味を持ち、現在は「宇宙旅行を安全・低料金で実現したい」と言って立ち上げた「ブルーオリジン」に掛けて表現したものだろうか?

アマゾンに対する注目は、
「Kindle Fire HDというタブレットを通じて電子商取引の構造をどのように変えようとしているのか?」
に集まっている。それを支える”ITエイリアン”の実像に迫り、コンパクトにまとめた本書は、アマゾンの戦略を読み解く上で様々な示唆を与えてくれるのではないかと思う。


【本書のポイント】

本書のポイントを以下に掲載いたします。


■使いやすさのためならなんでもする

 インターネット販売こそ自分の場所だと思われたいー最初からそう考えていたベゾスは、なにがなんでも利用者に感銘を与えようとした。たとえば、利用者から注文があったペーパーバックの本が在庫切れだった場合、ペーパーバックの価格でもっと高いハードカバーを送るといった具合だ。またアマゾン立ち上げの2年後には、著作権がわからなくなってしまった本を探せる絶版部門を設置した。ほかでは見つからない本がアマゾンでは見つけられると人々を驚かせることになる部門だ。
 ベゾスは、技術を活用してすばらしいサービスを利用者に提供したいと考えている。この方針から生まれたのが、有名なーそして悪名高いー特許技術、「ワンクリック注文」である。
(本書より P15〜P16)



■ウォールストリートでキャリアを積む

 1987年のプリンストン大学卒業記念アルバムでは、ジェフ・ベゾスの写真の隣にSF作家、レイ・ブラッドベリのなかなかに大胆で謎めいた言葉が引用されているー「宇宙はノーを突きつけてくる。それに対して我々は肉体の総力をもって反撃し、イエス!をたたきつける」
これは、ベゾスにとっても人生の指針となった言葉だ。
(中略)
 ジェフ・ベゾスは最初、プリンストン大学卒業後、そのままアントレプレナーになるつもりだったらしい。
 「最終的にはもう少し後回しにして、まずビジネスや世界の仕組みを勉強したほうがいいと考えたのです。」
 このようにアントレプレナーになるのは早すぎると感じていたが(どういう会社を興せばいいのかもわかっていなかった)、将来的に自分の会社を持つ道を行こうとは考えていた。それなら、新興企業のほうがいい。そう考えたベゾスは、できたばかりでリスクが大きく、いろいろと大変そうなファイテルに飛び込むことに決め、マンハッタンに移り住んだ。
(本書より P50〜P51)


その後、ベゾスはファイテル、バンカーズ・トラスト、D・E・ショーで経験を積むことになる。

 「ディールフローの活用による意思決定」しかり、「インターネットの発見」しかり、ウォールストリートでの経験は、ベゾスのその後の人生に大きな影響を与えたことは間違いない。
 チャンスをつかむきっかけをベゾスに与えたのはデビッド・ショーだった。1994年、話題が沸騰しつつあるモノのことをベゾスに教えたのだ。インターネットである。この技術が発展し、コンピューターネットワークで株取引を行う企業にチャンスをもたらしつつあったのだ。
(中略)
 ショーは、これからはインターネットの時代だと考え、インターネット関連の事業機会を探す仕事をベゾスに与えた。こうしてベゾスは、1994年にインターネットの研究を始め、その結果に感銘を覚える。インターネットは年率230%で成長しているという統計を見つけたのだ。
(本書より P64〜P65)



■フローチャートで本販売を選び出す

 若い頃乱読家だったことからわかるようにベゾスは本好きだが、だから地球最大の書店を作ろうとした訳ではない。事業的・技術的な自分のスキルを活用して一山あてたかっただけなのだ。可能性さえ大きければ、どのような事業でもよかった。今後インターネットには多くの人が集まる。人が集まる場所があったとき、その環境の特性を理解し、上手に利用する方法を発見できれば、集まった人たちになにかを売ることができる。こうしてベゾスは、世界最大のインターネット小売店を作りたいと考えるようになった。正しくは世界最大の小売店というべきかもしれない。
 同時にベゾスは、スタート時はひとつの市場に集中するべきだとも考えていた。市場のニーズを把握し、それをインターネット側のニーズや能力とマッチングさせるためには範囲を絞るべきだと考えたのだ。ひとつの市場で成功できれば、その後、他の市場についても同じようにできるはずだ。ここで問題になるのが、どういう製品を販売するべきなのか、だ。この点を検討するため、ベゾスは、ディールフローチャートを作成することにした。候補として20種類の商品をリストアップ。どの商品がインターネットで存在感をすばやく得られるかを考えるわけだ。
 「オンラインでしかできないことはないのかと考えました。物理的な世界ではまねできないことはないのか、を」
 こうして選ばれたのが本だったのだ。
(本書より P67〜P68)



■アマゾン・ドット・コムを立ち上げる

 ともかく、会社はカダブラという名で1994年7月に登記された。ベゾス夫妻がシアトルに到着したころのことだ。その7カ月後、ベゾスは社名をアマゾンに変更。Aから始まるのでアルファベット順で最初のほうに並ぶし、アマゾンは世界最大の川で会社の目標を体言する名前でもあったからだ。誰でもスペルがわかるのも大きなポイントだった。
 「オンラインの場合、スペルがわからなければ目的の場所に行けません。これはとても大事な点なのですが、世の中ではあまり気にされていません」
 だだし、表記は必ず「アマゾン・ドット・コム」とし、新しいタイプの事業だとわかるようにした。いわゆる「ドット・コム」企業で初めて成功したのがアマゾンであるーその後バブルがはじけ、ドット・コムがマイナスのイメージを持つようになってしまったが。
(本書より P85〜P86)



■キンドル登場

 2004年のどこかで、ベゾスは幹部に命じ、グレッグ・ゼールにコンタクトを取らせた。携帯情報端末のパームを作ったパームワンでハードウェアの開発をしていた人物で、その前はアップルでも働いた経験を持つ。そのゼールにアマゾン幹部は、アマゾン専用の電子書籍リーダーを開発する会社を作ってくれないかと持ちかけた。なぜ自分がそんなことをしないといけないのかとゼールはたずねたらしい。回答は「世界を変えるため」だった。
 こうして、ラボ126というよくわからない名前のスタートアップが立ち上げられた。拠点はシリコンバレーのクパチーノにあり、開発者はアップルやパームワンからゼールが引き抜いてきた。なにをしているところかよくわからない会社で、ウェブサイトにも「画期的な一体型消費者製品」を開発しているとしか書かれていない。2006年初頭には「j」と名乗るブロガーがラボ126のウェブサイトに注目し、アップルのiPodの競合製品かもしかするとスマートフォンを開発しているのではないかと憶測を書いたりしている。この謎が解かれたのは2007年11月19日−電子書籍リーダーの「キンドル」が発表されたのだ。
(本書より P184〜P180)



■ベゾスの哲学で宇宙へ

 宇宙飛行の未来は、本当に商業的な努力次第となるかもしれない。そしてもし、シャーレ内のバクテリアのようにそのチャンスが成長することあるなら、そこにいたいとベゾスは考えている。ブルーオリジンが事業として成立する日が来たら、そのとき、ベゾスにとってはアマゾンより大事な事業になるだろう。人生最初の大望は、おそらく、宇宙探索だったのだから。
 ベゾスは、アマゾンと同じ哲学でブルーオリジンを経営している。そのひとつ目は徹底した顧客第一主義でブルーオリジンについては、星が楽しめる、快適で安全、心躍るサービスの構築が進められている。
 ふたつ目は、きちんとしたものができるまで、発明、再発明をねばり強く続けることだ。
ベゾスは、自分が持つ発明の才能を深く信じている。ユーチューブに投稿した動画でも、次のように語っている。
「問題に遭遇した場合は、我々は、あちらかこちらかという考え方を絶対にしません。両方が得られる方法を見つけます。できると信じて努力すれば、どのような箱からでも出られる方法を発明します」
 3つ目は、長期的に考えること。ブルーオリジンなど、おそらくは何十年もかかるはずだ。もちろん、株価さえ上昇していればアマゾンを赤字のまま経営するのも特に問題はなかった。株式市場が急落したから、しばらく後退し、費用度外視の成長至上主義から比較的短期で利益を出す戦略へと転進しなければならなかったわけだ。ただ、このときはアマゾンに未来があると世の中に示さなければならないから方針を転換したわけで、ベゾスの目は常にもっと先を見つめている。
4つ目は、「毎日が初日」である。進む先には新しい課題がある、検討すべき新しいアイデアがある、また、新しい方向性もある。優れたアントレプレナーはそういうものだが、ベゾスの仕事がなんの変哲もなくなったり退屈になったりすることはない。彼が自分の会社を完成品だと考える日は来ないのだ。
 これら4つの哲学はいずれも、とても明快なルールだ。ベゾスの経営哲学について驚くようなことがあるとすれば、それは、世の中の経営者でこの哲学を実践できる人がほとんどいないらしいという点である。もちろんベゾスも、この世を去るときには足を止めることになる。その瞬間まで彼は仕事を続け、再発明する、新しいものを試す、星に向けて懸命に手を伸ばすなどするだろう。
 そしていつか、本当に到達してしまうかもしれない。
(本書より P253〜P255)



【関連書籍】


ワンクリック―ジェフ・ベゾス率いるAmazonの隆盛

1)本書の内容
 第1章 ワンクリックではまだ不満
 第2章 生い立ち
 第3章 就職
 第4章 ベゾス、インターネットを発見する
 第5章 ガレージの4人組
 第6章 優れた書店の作り方
 第7章 苦労の波
 第8章 軍資金の調達
 第9章 成長
 第10章 書店とは誰のこと?
 第11章 クラッシュ
 第12章 ベゾス、金ドルに賭ける
 第13章 アマゾンは書店を駆逐しつつあるのか?
 第14章 おかしな笑い方をするクールな男
 第15章 では、ベゾスはどういうマネージャーなのだろうか
 第16章 頭をクラウドに突っ込んで
 第17章 一歩ずつ、果敢に



ブログランキングに参加しております。よろしかったらクリックをお願いいたします。
人気ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村
そして「よい記事!」と思ってくださった方は、下の【Twitterでつぶやく】【facebook いいね!】【はてなブックマーク】等のボタンのクリックをお願いいたします!


posted by まなたけ(@manatake_o) at 16:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | IT/Web | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。