新浪改革の10年の「軌跡」と「意志」を示す本!『個を動かす』(池田信太郎著): ビジネス書のエッセンス(ビジネス書 書評ブログ)

2012年12月28日

新浪改革の10年の「軌跡」と「意志」を示す本!『個を動かす』(池田信太郎著)



個を動かす 新浪剛史、ローソン作り直しの10年を読んでみました。

新浪剛史氏がローソンの社長に就任したニュースは今でも覚えています。42歳という若さでの異例の社長抜擢、しかも苦境に陥っていたダイエーに代わって筆頭株主となった三菱商事の出身ということもあって、時のマスコミはこぞってこのニュースを流しました。それだけインパクトの大きいニュースだったのだなと当時を思い起こします。

あれから10年たった今、街を歩くと「ナチュラルローソン」「ローソンストア100」など、10年前にはなかったローソンを見かけるようになりました。

そんな10年前とは変わったローソンについて、本書では新浪剛史社長という人物を通じて、そして時にはインタビューを交えながら、ローソンを作り変えた10年が描かれております。

本書のご紹介に当たって、今回は、【感想】【関連書籍】の構成で書いていきたいと思います。


【感想】

本書で書かれたテーマは大きく2つ!
1)覆し難く見える巨大な「現実」を前に、どんな意志の力が働き得るのか?
2)新浪社長とはいかなる経営者なのか?

ということです。

この2つのテーマを読みとくヒントは、巻末の「スクウェア・エニックス 和田洋一社長」のインタビューにあるように思えます。

まずは、「2)新浪社長とはいかなる経営者なのか?」について!

本書を読んで、新浪社長の経営者としての姿は、巻末の和田社長から発せられた「信じて任す」という言葉に集約されているような気がいたします。

 このインタビューを受けるに当たって、新浪さんから「この話はやめてくれ」とか「こういう話を頼む」というのは一切ありませんでした。だから今日、新浪さんについてどうお話しするかは僕に委ねられています。普通は怖いと思うものだと思いますよ。でも、彼は僕に任せてしまう。まずはこれなんです。「信じる」。信じて任せてしまう。任せられた方も、信じられたら応えなくちゃと思いますよね。彼は「信じる」ことで物事を動かしていくタイプの経営者だと思います。
(中略)
 新浪さんはヒントを教えてあげた上で「やってみろ」と。それをじっと見守ってやる。そういう感じじゃないですかね。やれると信じてあげる、ということです。だから彼の部下たちは奮い立って動くんじゃないでしょうか。
(本書より P286〜P288)


それを象徴的に表したのが、新浪社長社長のインタビューにあった『ミッション・オリエンテッド』です。『ミッション・オリエンテッド』について、本書で新浪社長は以下のように答えております。

 僕はずっと、社長の顔色を見るんじゃなくて『ミッション(使命)』で人が動く会社にならないと駄目だと思っていました。支社制、支店制を取り入れたのも、そのためです。『誰か』に考えることを委ねてしまうんじゃなくて、ミッションを達成するためにどうすればいいかを自分たちで考える組織になる。ミッション・オリエンテッド(ミッションを原動力に)会社を変えていくということです。それがしっかりと定着して、現場に『上の誰か』に従うんじゃなくて自分たちで『考える力』が備わって、僕じゃなくても『ミッション』がしっかりしていれば動く組織になたということです。
(本書より P239)


本書の一連の改革を行ってきた新浪社長の経営者としての考えは、先の新浪社長の言葉に集約されているような気がいたします。


そして、「1)覆し難く見える巨大な「現実」を前に、どんな意志の力が働き得るのか?」について。

これも巻末の和田社長のインタビューに新浪社長の凄さを垣間見るヒントが掲載されています。

 僕と新浪さんが共通しているのは創業者じゃないという点です。(中略)何が言いたいかというと、10年間社長を続けているという人は、ほとんどが創業者か創業者一族なんです。
 創業者というのはもちろん言うまでもなく大変ですよ。ゼロから作るわけですから。でも、大変なんだけれども、逆に言うと、最初から自分とフィーリングが合う奴、力のある奴をガーッと集められる。大体100人くらいまではそれでいけます。気心の知れた連中だから、トップは何も言わなくてもいいんです。500人になっちゃうとちょっと変わってきますけどね。それでも、駄目なことが露呈するまで五年、10年かかりますから、ダーッとうまくいって成功して、それから駄目になるまでしばらく問題点は見えないんです。で、ようやく駄目になっていることに気づいた時には遅い。大分腐ってから分かるので、その駄目になった手元のアセットをどうするかですよね。
 創業者じゃない経営者というのは、そこから始めざるを得ないんです。自分が作ったものじゃないから、好きなものも嫌いなものもあるんです。きっと新浪さんも、ローソンの社長になられた段階で、大好きな人もいるし、大嫌いな人もいたでしょう。気にいた仕組みもあれば何でこんなものがあるんだというシステムもあるんです。落下傘で降り立ったんですから。だから、そのアセットの「本質」が何かということをじっくり見極めることから始めたはずです。
(本書より P291〜P292)


新浪氏が社長に就任したときは、内部はダイエーの負の遺産がたくさんあり、そして資源がほとんどない状態。しかも、社内は諦感漂う雰囲気に包まれていた。そして外は業界最大手のセブン・イレブンがそびえたつ!そんなマイナスの状況の中からのスタートに対して新浪社長はダイエー時代の負の遺産と、そしてセブン・イレブンという壁に向き合いながら周囲にどのように意志と進むべき道を示してきたのか?この点を著者の池田信太郎さんは、新浪社長のインタビューを交えることで新浪社長の各取り組みに対する考えを明らかにしながら「ローソンの歩んできた道」を表しております。

特に注目したのは「ローソンは、セブン・イレブンとは一線を画した形で独自の路線を歩もうとしている」ところです。

コンビニ業界は、老舗のセブン・イレブンが道を作り、他の会社がセブン・イレブンのやり方を追随する歴史でした。そして、それはダイエー時代のローソンも例外ではありません。
しかし、本書に書かれている新浪社長の方向性は「セブン・イレブンとは一線を画した」ものでした。本書の言葉を借りるならば、セブン・イレブンの「中央集権」に対し、ローソンの「地方分権」といったように、その独自性を、本書では他社がやり方を追随してきたセブン・イレブンと対比させながら表現しています。

特に「赤いローソン」では、セブン・イレブンとは違うローソンの独自性を象徴的な形で示されています。

コンビニエンスストアの利点は「均質のサービスを、場所にかかわらず、どの店でも享受できる」ところにあります。その均質性を保つ象徴が看板なのです。それは『コンビニだけが、なぜ強い? (朝日新書)』からの引用として本書に掲載されていたセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長の言葉にも表れています。

 これからセブン−イレブンをどうしたいか−マスコミの方にしょっちゅう質問されるのですが、いつも答えはひとつです。セブン−イレブンは、いつまで経てもセブン−イレブンなんですよ。ほかのビジネスに手を広げようとは思いませんし、まして看板の色を変えようなんて思わない。奇をてらったことは一切しません。
(本書より P91)


しかし、ローソンは「ナチュラルローソン」「ローソンストア100」「ハッピーローソン」など、顧客の志向や地域性に合わせて”看板を変えて”展開をしております。本書では「赤いローソンがあってもいい」という表現を用いておりますが、本書のテーマである「覆し難く見える巨大な「現実」に対し、どんな意志の力が働き得るのか?」に対する一つの回答として示されています。それは本書の以下の言葉に集約されます。

 つまり「劣化版セブン」ではなく、ローソンという「唯一無二の存在」になる。新浪がこの10年で取り組んできたことを一言で言うならばそれだ。これが実現した時に、初めてローソンはセブンと戦うことができる。
(本書より P86)


その根底には「個を捉える」という考え方が読みとれます。それは新浪社長が「顧客」を「個客」と呼ぶことからも伺えます。本書に書かれている新浪改革を一言で表すならば、「いかに個(顧客)を捉え、個(社員・オーナー)に委ねるか?」ということではないでしょうか?「覆し難く見える巨大な”現実”」に対し、「個を捉える」ことでそれを乗り越えようとする姿は「ダイバーシティ」への取り組みにも通じるものがあり、興味深く感じます。

本書は新浪社長の作り直しを通じて、今まで見えなかった「街のホットステーション」の別の側面を示してくれる本だと思います。

※1012-12-30追記
新浪社長のTEDxSendaiでのスピーチ動画を追記いたしました。
3.11後の相馬市でのローソン再開、そして震災支援を通じての経験を踏まえて学んだことについてスピーチを行っております。なお、東日本大震災後のローソン再会については、本書の第1章”試された分権経営”にも書かれております。

【新浪剛史 TEDxSendai (日本語)】


※追記ここまで


【関連書籍】



個を動かす 新浪剛史、ローソン作り直しの10年

1)本書の内容
 第1章 試された「分権経営」-ドキュメント・東日本大震災
 第2章 迷走する経営と上場の「傷跡」-社長就任前夜
 第3章 一番うまいおにぎりを作ろうー「成功体験」を作る
 第4章 「田舎コンビニ」を強みに転じるー「ダイバーシティーと分権」の導入
 第5章 オーナーの地位を上げましょうー「ミステリーショッパー」の導入
 第6章 加盟店オーナーにも「分権」-「マネジメント・オーナー」の誕生
 第7章 「個」に解きほぐされた消費をつかむー「CRM」への挑戦
 第8章 「強さ」のために組み替えるー「BPR」の取り組み
 第9章 僕が独裁者にならないためにー集団経営体制と新規事業
 第10章 人間・新浪剛史ーその半生
 インタビュー スクウェア・エニックス和田洋一社長「起業家ではない経営者」という同類から



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posted by まなたけ(@manatake_o) at 00:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 経済/ビジネス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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