【マインドマップ付き】「私益より公益」の心が伝わるマーケティングの本!『コミュニティが顧客を連れてくる』(久繁哲之介著): ビジネス書のエッセンス(ビジネス書 書評ブログ)

2012年11月08日

【マインドマップ付き】「私益より公益」の心が伝わるマーケティングの本!『コミュニティが顧客を連れてくる』(久繁哲之介著)



コミュニティが顧客を連れてくる 愛される店・地域のつくり方を読んでみました。

地方都市でシャッター商店街が多い中、ひと際かがやくお店もある。その秘密は「地域の方々が、そのお店を応援しよう」とする「コミュニティの形成」にあります。本書は「コミュニティの形成」につながるためのステップを各パートごとに「物語、調査と戦略立案、実践」として書かれております。

本書のご紹介に当たって、今回は、【本書のポイント】【感想】【マインドマップ】【関連書籍】の構成で書いていきたいと思います。


【本書のポイント】

本書のポイントを以下に掲載いたします。


■過疎の町で映画館が存続する理由

 大黒座は北海道の日高地方で唯一の映画館で今年、94周年を迎えました。
 映画館が街中に存続するには、20〜25万人の商圏(人口)が必要と言われますが、浦河町は人口1.4万人に満たない過疎の町です。また、地方都市の場合は20〜25万人以上の商圏であっても、映画館は郊外に出店・移転して、街中には映画館が無いことが多いが、浦河町には街中に映画館があります。
(中略)
 では、なぜ浦河町は1.4万人に満たない小さな商圏でありながら、街中に映画館が存続しているのでしょうか?
 地域「コミュニティの力」です。過疎の町で映画館を経営する厳しさを知りながら、4代目の館主として跡を継いだ三上さん夫妻の強い意思を、市民は強烈に支援して映画館に通いつめています。今度は、三上さん夫妻が映画館に通いつめてくれる市民の心が豊かになる作品を探しだしてきて、市民の支援に応えます。すると、その作品は市民共通の話題となります。その会話を聞いた市民は「じゃあ、私もそれを見に大黒座に行こう」と、大黒座のファンは増えると同時に、地域コミュニティの輪がどんどん広がっています。
 この繰り返しで、浦河町の地域コミュニティの力はどんどん深化していきます。そう、1.4万人に満たない商圏の映画館は「コミュニティが顧客を連れてくる」から94年間、街中に存在し続けているのです。
(本書より P2〜P3)



■物語を通じて「顧客の心をつかまれた」体験をする

本書では「販促テクニックの罠」として、以下のように述べております。

 「顧客の心をつかむ〜」という類の本が巷に溢れています。しかし、それを読んで「顧客の心をつかめるようになった」という話は聞いたことがありません。なぜでしょうか?理由は2つ考えられます。
まず、著者自身が販促者目線で「顧客として、心をつかまれた経験が乏しい」からです。そして、顧客として心をつかまれた経験が乏しいまま、販促テクニックを習得することしか関心が無いからです。
このように、販売者目線のままでは、いくら一生懸命本を読んでテクニックを習得しても「顧客の心をつかむ」ことはできません。
(本書より P68)


このため、本書では「顧客として心がつかまれた」経験を読書体験を通じて味わうことができるような6つの物語が紹介されております。
以下は“第5話「戦略的赤字施設」で、顧客の共感を得る”からの抜粋です。

 文化のまちづくりを標榜する自治体は多く、豪華な美術館や音楽ホール等の箱物を建設したが、利用率が非常に低い地域が少なくありません。なぜでしょうか?
 欧米は、文化のまちづくりに関する着想が日本とは正反対です。欧米人の多くは、芸術を心の底から愛していて、芸術は彼らのライフスタイルに必要不可欠な存在として定着しています。地域によっては、ソウルやジャズなどの特定の音楽が地域アイデンティティとして根づいています。そういう地域は、立派な箱物(美術館や音楽ホール)を造る予算に恵まれない場合も多いが、人々はストリートなど公共空間で歌い踊ることを楽しみます。
 また、欧米ではカップルが結婚して何年経っても、子供を預けてでも、デートを重ねます。芸術を愛する欧米市民にとって、美術館や音楽ホールは最適なデートコースとして愛用されます。
 こういう文化とライフスタイルが既に根づく欧米のような地域に、美術館や音楽ホールを後から造るから、その箱物の利用率は非常に高いのです。市民は芸術を楽しむ目的で、街中へオシャレをして出かける頻度が上がります。街中は賑わい、洋服購入やカフェ利用などオシャレ関連消費も誘発します。洋服店やカフェなどの新規出店を促し、街は更に賑わっています。正の連鎖が次から次へ起こります。
 地域再生は、このような「正の連鎖」を生みだす戦略が極めて重要です。この戦略の本質は「箱物より先に、それが必要とされる文化を創る」ことにあります。
 この戦略は、あらゆるビジネスに応用できます。すなわち「販売者が売りたい物より先に、消費者がやりたい事を創る」戦略です。
 消費者の関心は「モノからコトへ」変わったという話をよく聞きますが、この話は「販売者が売りたい物より先に、消費者がやりたい事を創る」戦略の重要性を示しています。
(本書より P80〜P81)


この戦略の実践例として本書では北海道恵庭市の楽器販売店が紹介されております。具体的な手順は以下の通りです。

@音楽演奏に挑戦したい人の悩みを聞く
A顧客の悩み事(演奏の場所と練習方法)を解決してあげる
B音楽演奏者が増えて、楽器が売れる


この「顧客への貢献へ徹する」経営が顧客の共感と、顧客とお店のつながりが生まれていることを物語の一つとして紹介されております。


■顧客の行動を調査する「エスノグラフィ」

顧客の動向を把握するために街中などでインタビューをはじめとした調査がよく行われております。そして、その調査の多くは顧客の「願望」のヒアリングが殆どです。しかし、「願望」と「行動」が一致しないのは、よくあることです。そして、顧客の「願望」を商品化したのはいいが、結局は売れなかったという理由も、「願望と行動は一致しない」ことにあります。本書では「願望と行動は分けて考える」(本書より P109)ことが、そして「行動観察調査『エスノグラフィ』を他人任せにせず、自分で実践すること」(本書より P110)が必要と述べております。

行動観察調査『エスノグラフィ』は、本書では以下のように書かれております。

 エスノグラフィは「エスノ(ethno)、グラフィ(graphy)」の合成語で、直訳すれば「民俗観察記述」です。多民族国家の欧米における調査やマーケティングは、民俗毎の違いを無視できない背景から、エスノグラフィが重要視されているようです。
 アンケート調査は、調査者が「既に仮説や先入観や業務改善目標を有して」いて、仮説や先入観の正しさを検査したり、業務目標遂行に有利なデータを集める「後追い調査」です。
 したがって、アンケートの質は、既にある「仮説や先入観の質」で全てが決まります。
 仮説や先入観が同じであれば、ほとんど同じ結果が得られます。例えば、横並び志向の強い自治体は、どの都市も「同じ先入観」からアンケートを作ります。各都市で被調査者は当然異なりますが「同質性の強い日本人に同じ先入観」から質問すれば「同じ答え」が出てきます。換言すれば、「狙った意図」から質問するアンケートを作れば「狙った意図どおりの答え」を引き出すことができます。
 アンケートでは「顧客の本音、事実が探れない実態」を民間企業の多くが既に熟知しています。だから、民間企業の市場調査はアンケートに代わり、エスノグラフィを重視するようになっています。
代表例はP&G社、マイクロソフト社が有名です。
 2005年、ウォールストリート・ジャーナル記事にP&G社のCEOであるA・G・ラフリー氏が業績急上昇の成功要因を問われて、次主旨の発言をしています。
 「P&Gの従来手法は、自社研究所で商品を作り、自社商品の性能の素晴らしさを一方的に売り込むものでした。しかし現在の手法は、家庭で消費者の実生活を行動観察して、消費者が何に不満を示して、何を求めているかを感じとって商品化しています」
(本書より P110〜P112)



■コミュニティを儲ける手段に利用する愚に気づく

本書のPart3ではコミュニティの作り方について説明しております。著者はPart3の冒頭で「コミュニティをつくる上で一番大切なことは下心を感じさせないこと」と述べております。

 人がコミュニティをつくる時、下心を感じさせたら、相手は必ず逃げます。これと同じことが販売現場で多発していて、第7話で次の話を紹介しました。
 顧客が消費を決断していない状態で、ふらっと立ち寄る業種の店で顧客が入店して直ぐ「いらっしゃいませ」と言いながら顧客にすり寄ってくる行為は、顧客と販売機会をかなり失っています。
 こういう店や企業が、顧客に下心を感じさせる接客姿勢のまま、コミュニティを儲けるための手段に利用し始めています。
 コミュニティを儲ける為に利用するツールとして今、最も注目されているのがフェイスブックなどSNSです。SNSを使って、顧客コミュニティをつくろうと企む事例の多くは、コミュニティとは名ばかりで、単なる宣伝にすぎないものが少なくありません。自社の利益(私益)を上げる為に、コミュニティを利用する下心がミエミエなのです。
 逆に、地域や顧客のことを思う公益精神があれば、表現方法が洗練されていなくても、顧客の共感を得ることができます。いや、むしろ「洗練されていない個性的な表現」こそ、下心を感じさせずに「顧客の心をつかむ」ことができます。
(本書より P154〜P155)



【感想】

地方都市の商店街が疲弊している中で頑張っているお店もある。北海道・日高地方にある人口1.4万人の町・浦河町に94年も続く映画館が街中にあると聞いて多くの方は驚かれるのではないでしょうか?本書の冒頭で紹介されている大黒座は北海道・日高地方に唯一ある映画館として、今年、94周年を迎えました。映画館が街中に存続するには「20万〜25万の商圏が必要」と言われる中、人口1.4万人の町の街中で映画館が存続できているのは、店主と町の住民のつながり、つまり「コミュニティの力」があるからです。「コミュニティの力」は町を活性化させ、そして新たなビジネスも創出させます。浦河町も多くの女性起業家が生まれております。著者は、この浦河町の「コミュニティの力」に大きく惹かれたことを「はじめに」の中で述べております。

その「はじめに」の中で書かれている中で私が最も印象に残ったのが、浦河町で起業した女性たちの言葉です。

 ”流行りの商業経営やマーケティングの知識は「顧客を攻略・誘導する対象」と見なした小手先のテクニックに偏重していて、そういう店には居心地が悪いし、商圏の小さい過疎の町には出店しない。だから、浦河にはそういう店が無い。それなら、自分が起業しようと思った。自分が顧客ならば絶対に「攻略・誘導されたくない」から、自分は商人として「顧客を攻略・誘導したりしない」。
(本書より P6)


そして、この文章は本書の姿勢を表すものでもあります。

 ・私益より公益
 ・見返りを求めない心が、顧客の心をつかむ
 ・物を売るには「物より事、箱物より文化」
 ・市場調査は自分が顧客から直接「きいて、感じとる」もの
 ・WIN-WINを、いきなり狙わない
 ・テクニックの表面だけを模倣する弊害
 ・顧客を観察して「新しい仮説を発見」する
 ・店主が売りたい「物」でなく、顧客のしたい「事」に注目

 etc...

小手先のテクニックに偏重しない「本物の顧客とのつながりを、そしてコミュニティをつくる」ためにはどうすればよいのか?その姿勢と気持ちが本書の文書の中に表れております。

特にPart1”コミュニティをつくる起業家6つの「物語」”に紹介されている店主の物語を読むと、物語の主人公である店主の顧客に対する気持ちを感じとることができます。

例えば、本書の物語に登場するマルヤガーデンズは、お店の前の横断歩道に傘を設置しております。お店の前はアーケードがあるので雨が降ってきたとしても濡れることはない。しかし、横断歩道をわたるときは雨に濡れてしまう。しかし、短い距離を歩くのに折りたたみ傘を出すのは面倒....そんな来店者の気持ちを配慮して行なったものです。傘が紛失することは当然あります。そしてその損失はマルヤガーデンズが負担することになります。しかし、マルヤガーデンズの「見返りを求めない心遣い」で傘を設置しております。このような思い、そして行動は顧客にも、そして読み手である私たちにも伝わります。この物語を読んで、多くの方が「このようなお店に行ってみたい」と思うのではないのでしょうか?

Part1に登場する物語のようなコミュニティを作るために必要な調査や戦略が、Part2”コミュニティをつくる3つの「調査と戦略立案」”に書かれております。このPartを読むと、「いかに自分の目や耳で、直接、顧客のニーズや不満を確かめることが重要か」ということが分かります。自ら感じ取ることで、その問題は「自分にとってもリアリティのある問題」として捉えることができるのです。そしてその解決策が行動として表れるわけですが、その根底には「私益より公益」というその思いがあります。「私益より公益」という思いがお客様にも伝わり、その「思いの輪」がお店のファンとなり、コミュニティとして形成されていくことが分かります。

「私益より公益」という思いが本書の随所で読みとれるため、読んだあとに”温かい気持ちになる”マーケティングの本です。


※2012-11-04追記
【マインドマップ】

image.png
拡大表示は以下のリンクをクリック!
なお、スマホでは綺麗に表示できないかもしれませんが、ご勘弁を(^^;)
コミュニティが顧客を連れてくる.html

そして、スマホの方は以下のリンクをクリック!マインドマップの内容を階層構造で表しました。
コミュニティが顧客を連れてくる.mm.html

※追記ここまで


【関連書籍】





コミュニティが顧客を連れてくる 愛される店・地域のつくり方

1)本書の内容
 Part1 コミュニティをつくる起業家6つの「物語」
  第1話 コミュニティの拠点「サードプレイス」を創る
  第2話 スローフードで、コミュニティを広げる
  第3話 お金と時間が無くても「シェア」で起業できる
  第4話 「私益より公益」の心が伝わると、顧客が増える
  第5話 「戦略的赤字施設」で、顧客の共感を得る
  第6話 「失敗に学べる、応援される」経営者になる

 Part2 コミュニティをつくる3つの「調査と戦略立案」
  第7話 顧客の行動を観察する「エスノグラフィ」
  第8話 顧客の本音を探る「グループ・インタビュー」
  第9話 「交流・効率・高級」の3コウ戦略

 Part3 コミュニティをつくる7つの「方法」
  第10話 店主の趣味を活かすコミュニティをつくる
  第11話 日替わり経営者が新たなコミュニティをつくる
  第12話 顧客の「したい事、関心事」で、顧客と繋がる
  第13話 店主の技術を教える教室コミュニティをつくる
  第14話 高齢者と若者が共存できるコミュニティをつくる
  第15話 街コンで「若い男女が繋がる」店・地域をつくる
  第16話 ニュースレターで「地域コニュニティ」をつくる

2)本書から学んだこと
 ・私益より公益!
 ・いきなりWIN-WINを狙わない!
 ・顧客の行動を自ら”感じとる”ことが重要!



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posted by まなたけ(@manatake_o) at 22:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | マーケティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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