【マインドマップ付き】現代にも生きている「小倉DNA」を表した歴史的名著!『小倉昌男 経営学』(小倉昌男著): ビジネス書のエッセンス(ビジネス書 書評ブログ)

2012年06月09日

【マインドマップ付き】現代にも生きている「小倉DNA」を表した歴史的名著!『小倉昌男 経営学』(小倉昌男著)


小倉昌男 経営学
  • 小倉昌男
  • 日経BP社
  • 1470円
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小倉昌男 経営学を読んでみました。

宅急便事業を始め、「名経営者」と呼ばれた小倉昌男氏の初めての自著である本書。実は、小倉氏の本を読んだのは初めてでした。今から10年以上も前の本なのですが、その内容は色あせることなく、現代を生きる我々に大きな示唆を示してくれるものと思います。

本書のご紹介に当たって、今回は、【本書のポイント】【感想】【マインドマップ】【関連書籍】の構成で書いていきたいと思います。


【本書のポイント】

本書のポイントを以下に記述します。


■宅急便のベースとなる気づき

小倉昌男氏が宅急便を始めるにあたり、頭の中にあったのは「小口の荷物の方が圧倒的に稼げる」という気付きからでした。

昭和34年、取締役営業部長に就任した小倉氏は営業利益向上のため、「手間がかかり、コストが割高だと思われた小口の貨物を断るよう営業の現場を指導した」(本書より)のです。しかし、「それが大きな過ちであるとは、このときは想像もつかなかった」(本書より)のでした。

その過ちに気づいたのは「西濃運輸をはじめとする関西勢は高い利益率を誇っているのに、ヤマトは利益改善に苦しんでいるのか?」という疑問から。考えているうちに、訪れた「小口の荷物の方が圧倒的に稼げる」という事実に気づいたのです。そして「ライバルはどうなのか?」という思いから、ライバルの様子を観察して事実を確認したのでした。

 私は大阪を時に、大手ライバルの支店をこっそりと外から覗いてみた。
(中略)
 私の観察では、営業利益率が七%以上の路線会社の荷筋は一口5個以下の貨物が多かった。5%以上の会社は大体10個以下であった。ヤマトは50個前後が多い。これでは利益率が低いも当たり前である。こうしてみると、小口貨物を断って大口貨物に重点を置いた営業戦略はなんと間違っていたことか。他社は大口貨物も運んでいたが、その陰で小口貨物を大量に運んでいたのが全然見えなかった。
 ちなみに当時、東京−大阪間の一個口の運賃は七百円であった。大型トラックの積載量の標準は10トン。ダンボール1個の重量が平均24キログラムとすると、一台に400個強積めるはずである。一口50個の荷物を満載すれば、先ほどの計算では一個当たりの運賃は200円だから、その四百倍として1台当たりの収入は8万円になる。それが一個口の荷物を満載すれば、700円×400個で、なんと収入は28万円になるではないか。
 一個口の荷物を集めるにはコストがかかる。けれども、これだけ運賃を稼げるのならば、商売として十分魅力がある−。実は、宅急便を始めようと考えた背景には、このときの計算が私の頭の中にあったのである。
(本書より)



■「全員経営」のベースとなる講演

ヤマト運輸には「ヤマトは我なり」という社訓があります。これは「全員経営」を表した社訓です。小倉氏が「全員経営」の概念を知ったのは、上智大学社会経済研究所の篠田雄次郎教授の講演を聴いたことがキッカケです。講演の要旨は以下の通りです。

 −共同体経営=パートナーシップ経営とは、経営者と労働者が対等に力を出し合って企業活動をやり、その成果を両者で分配するというものだが、いわゆる西ドイツ(当時)でいわれている労働者の経営参加とは異なる。共同体経営では、共に知り、共に働くという姿勢が中心である。従業員が自発性を高め、自己管理をしていくことに特色がある。そのためには、経済のお動き、経営の状態、人事など経営に必要な情報を、同時に従業員にも提供し、同じ目的意識を持たせることが必要である。成果配分は、みんなで考え、その決定は経営者に任せる。問題は質であり量ではない。−
(本書より)


この考え方はピラミッド型の組織を崩し、「セールスドライバー」と呼ぶ第一線で働くドライバーたちに「やる気」を引き出し、社員全員で情報共有を行う「小倉流経営の根幹」となっていきます。


■個人宅配市場への志向

ヤマト運輸が個人宅配市場へアプローチをし始めたのは以下の理由があったからです。

 1)通運部門、百貨店部門、そして基幹であるトラック運送の業績悪化
 2)個人向け市場にて事業を展開している民間業者が皆無


「打開策を打ち出さなければヤマト運輸は企業としての存在価値を失ってしまう」という危機感と、「個人向け市場は有望な市場である」という思いから、ヤマト運輸は個人向け市場に軸足を移す決意をするのでした。そのキッカケを与えたのは牛丼の吉野家ことが書かれていた新聞記事でした。

 なんでも運べる良いトラック会社になるという方向は、間違っているのではないか。それは抽象的な理屈にすぎないのではないだろうか。だいたいの話、具体的に考えると、本当にそんな会社になれるのだろうか。それよりも吉野家のように思い切ってメニューを絞り、個人の小荷物しか扱わない会社、むしろ扱えない会社になったほうが良いのではないだろうか。広く何でもやれる会社と、狭くひとつのことしかやれない会社の、どちらが可能性があるだろうか。
 吉野家の場合は(牛丼ひとすじ)という新しい事業を開発し、チェーンを展開して繁盛している。一方、ヤマト運輸の得意とする分野は、昔から小さな荷物である。消費者に近い小規模企業や家庭から出る荷物である。ならば、思いきって対象とする市場を変え、メニューを絞って新しい業態を開発したら、道が開けるのではないだろうか−。そのように真剣に考え始めたのは、昭和49年(1974)年ごろであった。
(本書より)



■サービスが先、利益が後

「サービスを向上させようとするとコストがあがる!」。サービスとコストはトレードオフの関係にあります。新しい事業を始めるにあたり「どれくらいコストがかかるのか?そして利益が出るのか?」というのは経営者にとっては気になる事柄です。

しかし、小倉昌男氏は宅急便を始めた業務会議で「これからは収支のことは一切言わない。その代わりサービスのことは厳しく追及する」(本書より)と強調し、「サービスが先、利益は後」を標語に事業を推し進めたのです。

小倉氏が唱える「サービスが先、利益は後」の真意は本書に以下のように書かれております。

 私が唱える「サービスが先、利益が後」という言葉は、利益はいらないと言っているのではない。先に利益のことを考えることをやめ、まず良いサービスを提供することに懸命の努力をすれば、結果として利益は必ずついてくる。それがこの言葉の真意である。
 利益のことばかり考えていては、サービスはほどほどでよいと思うようになり、サービスの差別化などはできない。となると、収入も増えない。よって利益はいつまでたっても出ない。こんな悪循環を招くだけである。
 つまり、どちらを先に考えるかで、結果は良くも悪くもなる。経営には常にトレードオフの問題がある。それに対する正しい対応を考えるのが、経営者の大きな責任であると思う。
(本書より)



■経営リーダー10の条件

小倉昌男氏は経営者に必要な資質を以下のように述べております。

 私は、経営者には「論理的思考」と「高い倫理観」が不可欠だと考えている。
 経営は論理の積み重ねである。したがって、論理的思考ができない人に、経営者となる資格はない。
 また、経営者は自立の精神を持たねばならない。これまで護送船団を組んだ行政や政治家の力に守られてよしとする経営者がどれほど多かったことか。しかし今、社会はボーダレス化が進んでおり、どこに競争相手がいるかわからない。常に論理的に考えて、攻める姿勢が必要なのだ。
 併せて経営者には高い倫理観を持ってほしい。社員は経営者を常に見ている。トップが自らの態度で示してこそ企業全体の倫理観も高まると、私は信じている。
(本書より)


そして、小倉氏は「経営リーダーの10の条件」として、以下の10カ条をあげております。

 1.論理的思考
 2.時代の風を読む
 3.戦略的思考
 4.攻めの経営
 5.行政に頼らぬ自立の精神
 6.政治家に頼るな、自助努力あるのみ
 7.マスコミとの良い関係
 8.明るい性格
 9.身銭を切ること
 10.高い倫理観



【感想】

感想を述べる前に、先日読んだ(株)ディスカヴァー・トゥエンティワン社長・干場弓子さんの面白い記事があったので、まずはそちらを紹介したいと思います。

 干場さんは、売れる本の条件を二つあげてくれた。
 WILL TO SELL  売ろうとする意志の強さ
 ABILITY TO DISCOVER  (新しい価値を)発見する力


(中略)

では、DISCOVER(発見)に必要な要素は何か。
干場さんは、アインシュタインが特殊相対性理論の帰結として行き着いた質量とエネルギーの等価性計算式をつかって、自らの考えを説明してくれた。

e=mc2

「C」は、「collect」=知識の引き出し、と「combine」=思いがけない組み合わせ、を意味している。
知識・情報は多い方がいい。しかし、ただ多いだけではなく、思わぬ組み合わせが必要である。シュンペーターの言う「イノベーション」であろう。

M」には、多元的な意味が込められている。

目標・目的、問題意識の「M」 
感動で人を動かMOVINGの「M」
マーケティングの「M」
そして、何よりMISSIONの「M」


社会を変えようという強い意志が、人の心を動かす原動力になる。
自己の最善を尽くそうという思いの強さが、目標や問題意識を鮮明にしてくれる。
自らの使命を自覚することで、創意工夫やイマジネーションが生まれる。

あれやこれやと考えを巡らし、まずはやってみようと行動することで「運」に巡り会う確率は高まる。 
そして「運」がDISCOVER(発見)の扉を開いてくれる。

慶應MCC「夕学五十講」楽屋blog『ヒットの方程式は「e=mc2」 干場弓子さん』より)


本書を読むと、小倉昌男氏の経営はまさに「e=mc2ではないか?」と思いました。

宅急便事業のベースとなった考え方や経営理念に基づく考え方を見ると、「C」や「M」に結び付く要素が多いことに気づきます。

例えば「全員経営」。【本書のポイント】でも書いた通り、「全員経営」のヒントとなったのは上智大学社会経済研究所の篠田雄次郎教授の講演!これが「collect」となり、「外に一人で出かけ、集配するドライバーに自発的、自主的に行動してほしい」との思いと「combine」し、「ヤマトは我なり」という社訓となって表れました。

また、宅急便事業のキッカケも、元を正せば「関西勢は高い利益率を誇っているのに、ヤマトは利益改善に苦しんでいるのか?」という問題意識の「M」から。この問題意識が「小口荷物は稼げる」ということに気づき、そしてその気づきが宅急便に「combine」したのです。

この宅急便事業。当時は運送業界では「イノベーション」とも言えるべき出来事でした。なぜなら「個人宅配は、いつどの家からどんなかたちの荷物をどこに運ぶのか決まっていないため、集配効率が極めて悪い」(本書より)ため事業にならないと当時の運送業界の常識だったからです。

しかし小倉氏はこの常識をあえて疑い、どうすれば効率よく集配作業ができるのかを考えたのでした。「郵便局の牙城である個人宅配市場にいかに切り込むか−」・・・・そこには小倉氏の「使命感」とも言うべき強い意志があったと感じます。MISSIONの「M」です。その「強い使命感」から、効率よく集配するための「ハブ・アンド・スポーク型のネットワーク」による集配・運送方法、「ゴルフ宅急便」や「クール宅急便」などの新商品の開発など、宅急便事業に関する創意工夫やイマジネーションが次々と生まれ、「DISCOVER(発見)の扉を開いてくれた」のだと思います。

その精神は小倉氏が亡くなった今もヤマト運輸には引き継がれています。その代表的なのは、東日本大震災のときにセールスドライバーたちが立ちあがって無償で自衛隊の輸送の手伝いをしたことから始まった「救援物資輸送協力隊」です。

この「救援物資輸送協力隊」ですが、被災したセールスドライバーたちが連絡が断たれた状態だったこともあり会社の指示を仰がずに自分たちの意思で行動し、輸送の手伝いをしたことがキッカケでした。後で会社が承認して正式な組織として発足したものです。「セールスドライバーは優秀なフォワードたれ」と小倉氏は本書に書いておりますが、その言葉を体現した行動だったと思います。

10年以上も前の本なのですが、不透明な時代である現代においても参考になる内容が書かれている本書。後世に残る歴史的名著であると言えます。


※2012-06-16追記
【マインドマップ】

image.png
拡大表示は以下のリンクをクリック!
なお、スマホでは綺麗に表示できないかもしれませんが、ご勘弁を(^^;)
小倉昌男 経営学.html

そして、スマホの方は以下のリンクをクリック!マインドマップの内容を階層構造で表しました。
小倉昌男 経営学.mm.html

※追記ここまで


【関連書籍】


経営はロマンだ! 私の履歴書・小倉昌男
  • 小倉昌男
  • 日本経済新聞社
  • 630円
Amazonで購入


小倉昌男 経営学

1)本書の内容
 プロローグ ―― 三越との訣別、そして宅急便へ
 第1部 牛丼とマンハッタン ―― 宅急便前史
  第1章 宅急便前史
  第2章 私の学習時代
  第3章 市場の転換 ―― 商業貨物から個人宅配へ
  第4章 個人宅配市場へのアプローチ

 第2部 サービスは市場を創造する ―― 宅急便の経営学
  第5章 宅急便の開発
  第6章 サービスの差別化
  第7章 サービスとコストの問題
  第8章 ダントツ三ヵ年計画、そして行政との闘い
  第9章   全員経営
  第10章 労働組合を経営に生かす
  第11章 業態化
  第12章 新商品の開発
  第13章 財務体質の強化

 第3部 私の経営哲学
  第14章 組織の活性化
  第15章 経営リーダー10の条件

2)本書から学んだこと
 ・「e=mc2」が「発見」につながる!
 ・自らの「ミッション」に焦点を合わせ、考え、行動することが大事!
 ・経営者には「論理的思考」と「高い倫理観」が必要!



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posted by まなたけ(@manatake_o) at 17:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 企業論/組織論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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