ソーシャルメディアとキュレーターが電子書籍を進展させる?『電子書籍の未来図(立入勝義著)』: ビジネス書のエッセンス(ビジネス書 書評ブログ)

2011年07月22日

ソーシャルメディアとキュレーターが電子書籍を進展させる?『電子書籍の未来図(立入勝義著)』


電子出版の未来図
  • 立入勝義
  • PHP研究所
  • 756円
Amazonで購入


しばらく本の話題から外れていましたが、久しぶりに本の話題を書きます。

私は以前レビュー記事を書いた『検証 東日本大震災 そのときソーシャルメディアは何を伝えたか? (ディスカヴァー携書)』を読んで以来、その視座の高さと分かりやすい論理的な文章から、著者の立入勝義さんのファンになってしまいました。

立入さんはアメリカに居住しているのですが、現在は日本に戻ってきております。戻ってきている間は、メディア・講演会等で忙しい毎日を送っているようです。

今回紹介する電子出版の未来図 (PHP新書)は、J-Waveの「LOHAS TALK」という番組で知ったので読んでみようと思い、手に取りました。読んでみて思ったことは、やはり「視座の高さを感じる内容」ということでした。「LOHAS TALK」のナビゲーター・小黒一三さんが「出版関係の方は是非読んでいただきたい!」と言っておりましたが、納得はいきます。

今回のレビュー記事は【本書からの考察】【感想】の2点から、記事を書きたいと思います。


【本書からの考察】
■「電子書籍」は「書籍」の電子版?
iPadが登場したときに電子書籍として紹介されたのが「不思議の国のアリス」でした。iPad でページをめくって読む感覚は「まるで本を読んでいるようだ」と、物凄く感動した覚えがあります。この印象があるが故に
  電子書籍≒書籍
という捉え方が一般的に出来上がったものと思います。私も従来はそのように捉えてまいりました。

しかし、最近は違う捉え方をしております。多分、大多数の方とは違う捉え方かも知れませんが、私は
  電子書籍≒ブログの集大成
という考え方がしっくりくるようになりました。

「ちがうよ!ブログって書籍のようにページをめくったりできないじゃないか!」....全くもって、おっしゃる通りです。
実は、このような捉え方をした理由は「書籍と電子書籍の表現の違い」からです。

例えば、電子書籍の代表的なフォーマットとしてEPUB3.0があります。このEPUB3.0というフォーマットは、HTML5がベースとなっています。HTMLはウェブで使われるタグ付きフォーマットです。誤解を恐れずにいうと、EPUB3.0で表現される電子書籍というのは「ウェブの世界で表現されるブログの延長線上にある!」と捉えることができます。

ウェブの世界では、文字や写真だけでなく、動画や他のページへのリンクなど、従来の書籍にない表現方法が可能です。そして、表現する人の創意・工夫によっては、「従来の書籍とは違った世界」を醸し出すことが可能です。
  電子書籍≒ブログの集大成
といった理由もそこにあります。

著者も「第5章 電子書籍書籍はどこへいくのか?」の中で、
 ・ソーシャルブログが電子出版される時代
 ・電子書籍はこれまでの書籍ではない

と述べておりますが、その考えに私も同意します。

■出版社はガラパゴス化を望んでいる?
電子書籍に対する出版社の動きを見ていると「出版の゛ついで゛に電子書籍もやっている」ようにみえます。そして、それは「電子書籍を推進したくない」ことを望んでいるようにも見えます。これは、ある意味分からなくもありません。電子書籍のビジネスモデルは、編集・マーケティング・営業・販売といった既存の書籍ビジネスモデルを破壊してしまうモデルだからです。

では、「アメリカで起こった電子書籍の波が日本を巻き込むのか?」というと、今のところ私は否定的です。

その最大の理由は「日本語が防波堤となって出版社を守っている」からです。
「電子書籍の潮流に巻き込まれずに”ガラパゴス化”を形成している」最大の理由は、ここにあると思っております。

しかしながら、”ガラパゴス化”の中で出版事業を行うことは、人口減少、少子・高齢化の進む日本においては、それなりのリスクが伴います。そして、「ソーシャルメディアとアンビエント化」(後述)が市場をさらに細分化させる要因にもなっています。

個人的には「書籍と電子書籍は似て非なるもの」と考えているので、棲み分けは可能だと思っております。しかし、細分化された市場の中で、出版社が生き残ってのは容易ではありません。生き残っていくためには、書籍、電子書籍に関わらず、「キラーコンテンツが重要な要素」であることは言うまでもないことです。

「キラーコンテンツを絡めながら、どのような方法で多くの読者を取りこんでいくのか?それとも電子書籍の時代に合わせ、業態を変えていくのか?」そこに出版社の知恵が求められそうな気がしております。

■ソーシャルメディアとキュレーターが電子書籍を進展させる?
書籍というのは、いうまでもなく「マスメディア」の一種と言えます。しかし、昨今の新聞・テレビ・出版社を見てもわかる通り、マスメディアは苦境にあえいでいる状況です。佐々木俊尚さんは『電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)』の中で「自分がよいものを選ぶ、読む、評価する”アンビエント化の結果」と言っております。

そして、その”アンビエント化”を推し進めていくと、「自分の価値観の合うもの同士がコミュニティを作り、文化を形成する」ということにつながります。そのつなぐ役目となるのが、ツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアです。近年、ソーシャルメディアが発展してきた理由として、「価値観が合うもの同士がコミュニティを作る役割を担った」ことがあげられます。

では、ソーシャルメディアの中で活躍するのはどのような方かというと、私はやはり「キュレーター」だと思います。

ソーシャルメディア時代のキュレーターとは以下の方を表します。
一次情報を発信することよりも、その情報が持つ意味、その情報が持つ可能性、その情報が持つ「あなただけにとっての価値」、そういうコンテキストを付与できる存在の方が重要性を増してきている
(佐々木俊尚著『キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)』より)

つまり、Googleなどで検索した情報を、そのまま発信するのではなく、自分にとって有益な「価値」を付加して提供する存在です。ブロガー(特にアルファーブロガー)などは、その代表的な存在でしょう。

著者は「ブログの欠点はツールとしての独特の体裁があり、一気に読みこなすためにはあちこちクリックする必要があるし、印刷してもレイアウトがスムーズに出てこない。つまり、ブログをまとめて読むために、今後は、電子出版が用いられることも大いにありうるだろう」(本書より)と述べております。

先にも述べた通り、ブログと電子出版はフォーマットの親和性が非常に高いです。

そしてソーシャルメディアにおいて影響を与える「アルファーブロガー」は、自分を支持してくれる仲間のために、自ら書き綴ったブログをベースに電子出版を行う。そして、仲間はそれを拝読する。

そんな「アンビエント化」されたコミュニティが一層進む中で、電子書籍の文化が形成されていく。パブーなどをみているとそんな気がしてなりません。


【感想】
冒頭にも述べた通り、『検証 東日本大震災 そのときソーシャルメディアは何を伝えたか? (ディスカヴァー携書)』を読んだ時、その視座の高さと分かりやすい文章で、すっかりファンになってしまいました。その視座の高さは本書においても表れています。

また、今回取り上げた部分意外にも「アマゾン、アップルの垂直統合」や「電子書籍に仕掛けられた罠」など、著者が自らアメリカで経験したことを書いているなど、興味深い話題が多いです。

そんな中でやはり一番大きなポイントだと思ったのは「電子書籍は今までの書籍ではない!」ということです。著者もIT技術に詳しいことから、本書の中では技術的な側面からも説明されておりますが、私はやはり「電子書籍は、表現方法が多岐に渡る。したがって、クリエイターが創造力を働かせることにより、奥深い書籍ができるのではないか?」と本書を読んで思ったことでした。多分、これは自分がブログを書いたからこそ分かったことだと思います。

本書は、ラジオでのトーク内容からすると、まだ初版ということらしいのですが、もっと売れて欲しい本だと思いました。
そして、ソーシャルメディアプロデューサーとしてご活躍の著者が、ソーシャルメディア、そして電子書籍について、今後、どのようなことを語るのか?今後も注目して行きたいと思います。

最後に立入勝義さんの意力ブログをリンクします。
この中で、立入さんがソーシャルメディアについてどのようなことを語っているのか?興味のある方は、是非ともご覧ください。

電子出版の未来図 (PHP新書)

1)本の内容
 第1章 電子書籍に仕掛けられた罠
 第2章 「iPad」「Kindle」は黒船なのか?
 第3章 電子書籍バカの壁
 第4章 出版社は生き残れるのか?
 第5章 電子出版はどこへ行くのか?
 第6章 クリエイターよ、大志を抱け!

2)この本から学んだこと
 ・電子書籍は従来の書籍とは、似て非なるもの!
 ・電子書籍の勃興のカギは「ソーシャルメディア」と「キュレーター」!


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posted by まなたけ(@manatake_o) at 22:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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