福島第一原発事故の発生原因と問題点を検証してみる!『日本復興計画(大前研一著)』: ビジネス書のエッセンス(ビジネス書 書評ブログ)

2011年05月13日

福島第一原発事故の発生原因と問題点を検証してみる!『日本復興計画(大前研一著)』




2011年3月11日は日本にとって忘れられない1日となりました。そう、東日本大震災の発生です。マグニチュード9.0という観測史上、世界で5番目の大地震が東日本全体を襲ったのです。
そして、地震直後に発生した大津波は東北地方太平洋側沿岸部に、壊滅的な被害をもたらしました。
特に、福島第一原発事故は、人類史上最悪と呼ばれているチェルノブイリ原発事故に並ぶ「レベル7」の事故となったのは、記憶に新しいところでしょう。

本書は『日本復興計画 Japan;The Road to Recovery』というタイトルはついているものの、大半のページは「福島第一原発事故」に関連した内容となっております。

しかし、テレビの解説を聞いても、よく分からなかった
 ・福島第一原発事故はどのように起こったのか?
 ・福島第一原発の何が問題だったのか?

が、素人の私でも分かりやすく書かれております。
それは、MITの原子力工学科で博士号を取得し、日立で原子炉プラントの設計に携わった元原子力エンジニアの知見と、大前さんの「説明力の高さ」によるところが大きいのでしょう。

本書は「大前ライブ」で放送された内容を元に編集されたものです。本書の最後にYouTubeのURLが記載されているので、You Tube でご覧になることができます。
しかし、改めて、文字にされたものを読むと、より理解度が高まります。

ご承知の方も多いと思いますが、ここで本書の内容を参考に、「福島第一原発事故は何故起こったのか?」について、以下に記載します。

【福島第一原発事故はどのように起こったのか?】
東日本大震災により送電線の鉄塔が倒壊し受電不能になりました。その結果、外部電源が遮断され、冷却装置はストップしてしまいました。また、大地震の発生後に襲った大津波により、非常用電源として用意されていた2系統のディーゼルジェネレーターが両方とも使用不能となってしまいました。全電源消失状態となったわけです。
その結果、原子炉は高温となり空炊き状態に。そして、水素爆発となり、放射能が外に拡散してしまう結果となってしまいました。

【福島第一原発の何が問題だったのか?】
(よく言われていることですが)まず、電源関係の装置が全て海側にあったことです。この電源装置が津波によって、全て消失してしまいました。
結果論になりますが、原子炉の設計思想にも問題があったと思われます。例えば緊急炉心冷却装置などは、全て電源があることが前提となります。逆の言い方をすれば、電源がない状態では使い物になりません。これは本書を読んで初めて知ったことですが、原子炉工学を学んだ方にとって、原子炉の安全設計を行うときに、最初からすべての電源がきれているという事態は想定していないことが背景にあります。
このため、何とか電源を確保するために工事現場などで使用される電源車を呼び寄せましたが、到着した51台全て電圧が合うものがありませんでした。福島第一原発はGE製で電気の規格がアメリカにあったもののため、日本の規格の電源車では合うはずがありません。
こうしてみると、結果論にはなりますが、適応する電源車の確保など、非常時の電源確保に想定の甘さがあったが見てとれます。
ただ、本書によると、東電の中にも阪神・淡路大震災の後に「福島第一と第二を地下ケーブルで電線をつなぎ、非常時の電源を確保すべき」という提案をしていたようです。結局は採用されませんでしたが、もしこの提案が採用されていたならば、結果はまた違ったものになるかもしれません。
このあたりは東電の体質にも問題があるのかもしれません。今回も、最前線で頑張っている現場の所長が防潮堤の建設を主張しても、「本社がダメ」と言うとそれまでです。大前さんも「現場の知恵が欠けていた」と指摘しておりますが、現場に知恵があっても、行政も含め、それを活かす組織になっていないことに問題がありそうです。

『日本復興計画』というタイトルとは違い、ページの大半は今回の大震災による福島第一原発の事故に触れられています。そして、その中では
 ・原子力行政の問題点
 ・東電の体質の問題点
 ・今回の震災に対する政府の対応や原子力保安院の問題点

が書かれております。

これらの問題点や福島第一原発事故がなぜ起こったのかを見てみると、政府が停止を要請した「浜岡原発は大丈夫なのか?」と心配になります。

【電力問題】浜岡原発停止要請を契機に次世代エネルギー政策の本格的検討を!』でも述べた通り、原子炉を停止しても、冷却装置を稼働し続ける必要があります。そうしないと、福島第一原発4号機のように水素爆発してしまう可能性があるからです。しかし、冷却装置が稼働するためには電源装置を守ること、そしてあらゆる場合においても電源を確保する仕組みがあることが必要です。今回の停止要請の中で、そのあたりに関するコメントが一切ないことに、非常に懸念をもっております。

また、本書にも書いてあることですが、原発は民間企業が扱える代物ではないということです。これは過去の国の原子力行政に従った結果なのですが、一度事故を起こしてしまうと、企業そのものが吹っ飛んでしまう可能性があります。今回の事故を受け、
 ・デンマークやドイツのように自然循環型への移行を考える
  (日本はこの分野においては完全な後進国)
 ・現在の原子力発電所は国が管理し、電力会社は送電に責任を持つ

など、真剣に今後のエネルギー政策をどうするかを検討する段階に来ていると思います。

本書を読んで、「福島第一原発の事故の理解を深めることができた」とともに「他の原発に対して大丈夫なのか、注意をする必要がある」と感じました。

日本復興計画 Japan;The Road to Recovery

1)本の内容
 第1章:これで原子力の時代は終わった
 第2章:三分の二に縮小する生活
 第3章:日本復興計画

2)この本から学んだこと
・福島第一原発事故には原子炉設計、電源確保、建物の構造に問題が起因している
・東電の本社や行政には、もう少し「現場の知恵」を活かすことが必要である
・浜岡原発なども震災時におけるバックアップ電源の確保に細心の注意を払うべきである
・日本はエネルギー政策、または原子力発電所の管理体制を真剣に考えるときにきている


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タグ:大前研一
posted by まなたけ(@manatake_o) at 00:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 大前研一 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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