ビジネス書のエッセンス(ビジネス書 書評ブログ)

2014年02月23日

「成功する人」はどのようなタイプか?『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』(アダム・グラント著)



「GIVE & TAKE」という言葉を聞くと、「相手に利益を与え、自分も相手から利益を得る」という意味を連想する。今回紹介する本書GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代も、当初、タイトルを見たときは、「相手に与えることで、自分も相手から利益を得ることができる。だからどんどん相手に与えよう」ということを勧める本だと想像した。しかし本書はそのような本でなく、組織心理学の研究者である著者が「成功する人はどのようなタイプの人か?」を示した本である。

本書は人間を3つのタイプに分けている。

 ・ギバー:人に惜しみなく与える人
 ・テイカー:真っ先に自分の利益を優先させる人
 ・マッチャー:損得のバランスを考える人


この3つのタイプのタイプのうち、最も成功しやすいタイプは「ギバー」であると本書は主張する。そして、「成功しているギバー」の「人脈づくり、協力、人に対する評価、影響力」についてどのような行動を取っているかを解説している。

 まずはじめに、なぜギバーがもっとも成功するのか、その理由について説明したいと思う。
 ギバーは「お人好しで、他人にいいように使われる人」と思われがちだが、実は意外にも成功者が多い。(中略)
 そうはいっても、成功できないエンジニアや販売員がいることも忘れるわけにはいかない。人に利用され、うだつの上がらない人も確かにいる。では、いったい何がお人好しと成功者を分けるのだろうか。それは、生まれついた才能や素質というより、その戦略や選択に関係している。どうしてトップまで登りつめるギバーがいるのか、それを説明していくのが、彼らについてよくいわれている二つのこと−思いやりがあって、利他的である−が、実は必ずしもそうではないことがわかるだろう。
 そして三つ目に、ギバー特有の成功法を明らかにしていこうと思う。もちろん、ギバーも、テイカーも、マッチャーも成功することは可能だし、現に成功してもいる。しかしギバーが成功するときは、ギバー特有の現象が起こるのだ−その成功がまわりの人びとに波及していくのである。
 テイカ―が勝つ場合には、たいていほかの誰かが負ける。調査によれば、成功したテイカ―は妬まれやすく、何とかしてその鼻をへし折ってやろうと周囲から思われるという。それとは対照的に、ホーニックのようなギバーが勝つと、みんなやんやと声援を送り、雛うすることなどない。その成功が、周囲の人びとの成功を増幅させるからだ。
 ギバーは成功するから勝ちを得るだけでなく、価値も生み出す。それがテイカ―やマッチャーと違っているのだ。
(本書より P35〜P37)


本書に登場するギバーのうち、もっとも有名人はエイブラハム・リンカーンであろう。言わずと知れた第16代アメリカ大統領である。一見「お人好し」に見える彼が、第16代アメリカ大統領に就任したのは興味深い事例だ。

しかし、上記の引用にも述べられているように、「成功するギバー」と「燃え尽きるギバー」がいるのも事実である。それを分けるものはなにか?そのキーワードは「まとめて与える」「周囲からサポートを受ける」である。

 他者志向のギバーがサポートネットワークを築いて、助けが必要なときに頼ることができる。これが、まとめて与えるとともに、他者志向のギバーが自己犠牲をしているギバーよりも燃え尽きにくい理由なのである。
(本書より P280)


監訳者である楠木建一橋大学大学院教授が「世の”凡百のビジネス書”とは一線を画す一冊!」と言っている通り、本書は小手先のテクニックではなく原理原則が書かれた本だ。「ゆるくつながる」社会において”他者貢献”がキーワードとなりそうな中、本書の内容はこれからの時代において有益な本と言えそうだ。


【本書のポイント】

■ギバー/テイカ―/マッチャー

 「テイカ―」は常に、与えるより多くを受けとろうとする。ギブ・アンド・テイクの関係を自分の有利のようにもっていき、相手の必要性よりも自分の利益を優先する。テイカ―にとって、世の中は食うか食われるかの熾烈な競争社会だ。だから成功するには、人より上にいかなければならないと思っている。能力を証明するために自分を売り込み、また、費やした努力は必ず認められるようにする。たいていのテイカ―は冷酷でもなければ非常でもない。ただ用心深く、自己防衛的なだけである。自分の身は自分で守らねばならないと考えているからだ。
(中略)
 テイカ―が自分を中心に考えるのに対し、ギバーは他人を中心に考え、相手が何を求めているかに注意を払う。テイカ―なら、得られる利益が損失を上回る場合にかぎり、相手の有利になるように協力する。一方ギバーなら、いつ何時も、損失より「相手」の利益のほうが上回るように手を差し伸べるのだ。いいかえれば、自分が払う犠牲はあまり気にせず、見返りをいっさい期待することなく相手を助けるということである。仕事においてギバーである人は、自分の時間、エネルギー、知識、スキル、有益な人脈を惜しみなく分かち合おうとするだろう。
(中略)
 しかし、いざ職場となると、ギブ・アンド・テイクはもっと複雑なものになる。仕事においては、ギバーかテイカ―かにはっきりと分かれることはほとんどなく、たいていの人が第三のタイプになる。それが、与えることと受け取ることのバランスを取ろうとする「マッチャー」だ。マッチャーは常に”公平”という観点にもとづいて行動する。だから人を助けるときは、見返りを求めることで自己防衛する。マッチャーは相手の出方に合わせて、助けたりしっぺ返しをしたりしながら、ギブとテイクを五分五分に保つのである。
(本書より P27〜P29)


■「他者志向」になる

 テイカ―が「利己的」で、成功できないギバーが「自己防衛的」なら、成功するギバーは「他者志向的」といっていいだろう。
 自分を犠牲にして与えていれば、すぐにボロボロになっていまうだろう。「他者志向」になるということは、受け取るよりも多くを与えても、けっして自分の利益は失わず、それを指針に、「いつ、どこで、どのように、誰に与えるか」を決めることなのである。
 他者への関心に自己への関心がかなり結び付けば、ギバーは燃え尽きたりやけどしたりすることが少なくなり、成功しやすくなる。
(本書より P254〜P255)


■「与える人」は”その一歩先”を見る

 ギバーの頭の中では、成功の定義そのものがちょっと変わっている。
 テイカ―が成功を、人を出し抜いて優れた成果を達成することだと考えるのに対し、マッチャーは成功を、個人の行政きと他人の業績を公正に釣り合わせることだと考える。
 一方、ギバーは成功を、他人にプラスの影響をもたらす個人的なものだと考えるのだ。
 この成功の定義は、働く人の雇用スタイル、評価、報酬、昇進のやり方を根本から変えてしまう。個々の従業員の生産性だけでなく、この生産性が周囲の人びとに与える影響にも注意を払わなければならないということだ。成功のイメージが、「個人の業績+他人への貢献度」で成り立つとすれば、職場でもギバーになる人が増えるかもしれない。テイカ―もマッチャーも、個人と共同体両方の利益を高めるため、他者を思いやるをえないだろう。
(本書より P381)


【関連書籍】



GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代

1)本書の内容
 
 PART1 あなたは、まだ「ギブ&テイク」で人生を決めているのか
 PART2 「名刺ファイル」と「フェイスブック」を見直せ
 PART3 チームの総力を活かせる人
 PART4 荒野で“ダイヤモンド”を見つける法
 PART5 「パワーレス」の時代がはじまった
 PART6 「与える人」が気をつけなければならないこと
 PART7 気づかいが報われる人、人に利用されるだけの人
 PART8 人を動かし、夢をかなえる「ギブの輪」
 PART9 「成功への道」を切り拓く人たち―あとに続くのは誰だ

2)本書から学んだこと
 ・ギバーがもっとも成功するタイプである!
 ・「自己犠牲」のギバーではなく「他者志向」のギバーになる!
 ・「与える人」は”その一歩先”を見る!



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2014年02月16日

一見関係のない情報が「化学反応を起こす」ネタとなる!『情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版]』(奥野宣之著)



※献本ありがとうございます

本書情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版]は、2008年に刊行されたベストセラー『情報は1冊のノートにまとめなさい』の全面改定・増補版である。

旧版との違いを述べると、旧版は「情報整理」に主眼が置かれていることに対し、本書は「知的生産」に主眼が置かれているところである。

知的生産術については今まで多くの方法が提案されてきた。例えば、システム手帳を活用した方法、パソコンを活用した方法、近年はスマートフォンやタブレット端末を活用した方法など。新しい方法が提案されるたびに我々は大きな期待を抱き、学び、使いこなそうと努力してきた。だが、努力むなしく破綻してしまうことが多い。その理由として、「高度すぎるから」(本書より P15)と著者は言う。

 多くの分類・整理を基本にしたシステムは複雑すぎます。
 古くは、図書館のようにメモや資料を何十、何百という項目に分類して棚やキャビネットに整理するやり方が提唱されていました。最近の、デジタルツールを使った知的生産術でも、端末やアプリケーションを細かく設定して、同期設定やタグ付けの設定をしたりと、非常にややこしいものになっています。
 こういったやり方は一部の人にとっては良くても、ほとんどの人にとっては難しすぎます。また、はじめのうちはできそうでも、情報がたまるほど気軽に扱えないようになり、ますます複雑なものになっていくのは目に見えています。
 「分類・整理」自体は有意義なことだし、学者やジャーナリストにとっては必要な作業でしょう。しかし、普通の人にはおすすめできません。とてもじゃないけど、続けられないからです。
 結果的に、これまでの知的生産術は、「絵に描いた餅」になってしまっていました。
 理論としては「分類・整理で情報が活用できる」のかもしれませんが、多くの人にとっては「分類・整理のせいで情報が活用できない」ということになっていたのです。
(本書より P15〜P16)


では、著者が薦める方法とは?それはタイトルにある通り「情報をひとつのノートにまとめる」という方法である。本書に書かれているメリットをまとめると、以下の通りとなる。
 @「簡単」だからストレスなく続けられる
 A自由にアレンジしながら、自分のスタイルに最適化される


著者はスケジュール管理・アイデア・新聞記事・読書メモなど全て一冊のノートにまとめているとのこと。その根底にあるのは「アイデアとは既存の要素の新しい要素の組み合わせである」(本書より P160)という考え方である。

もし、情報が分類別に別々のノートにあったとする。このとき、それぞれのノートに書かれた要素は分類ごとに分けられているから、つながりが生まれにくい。しかし、「アイデアというものは、一見関係のない要素が有機的に結びついたときに生まれる」ことが多い。それが一冊のノートに集まっていると、ノートを見かえすことで、「お?これとこれを組み合わせることで、何か面白いことができるんじゃないか?」という”ひらめき”が起きやすくなる。

とはいえ、全てなんでもかんでも一冊のノートにまとめることは、人によっては”使いづらさ”を感じることもあるであろう。実際、私の場合も、スケジュール関連は、一つのノートではなく、デイリータイプの手帳で管理した方がやりやすい。ただ、「これは?」と思った情報について集めている「情報ノート」については、本書のやり方と同じように一つの手帳にまとめて書いたり貼ったりしている。個人的には、「その方が化学反応が起きやすい」と思うからだ。

本書の目的は、あくまで「知的生産」にある。そのために「一冊のノートにまとめること」を方法論として提案している。だが、その根底には「自分の感性でつくったノートだからこそ信じることができる」という著者の思いがある。自分の感性で自由にノートをつくるに当たり、ネタのストック方法としての本書の提案は大きな参考になるのではないかと思う。


【本書のポイント】

■ノートに集めるから素材になる

 ノートに記録した段階で記憶に刻まれているから、原稿を書いているときに「アレが使えるのでは??????」と思い出すことができるのです。
 つまり、ノートにあるから「アレを参照したい」と思うのであって、ノートにないものは、そう思うことすらほぼないわけです。
 これが、参照したいものが、ほぼ100%ノートから見つけ出せる理由です。
 デジタルツールでは、こううまくはいきません。
 情報をストックするとき、書いたり貼ったりという手間がかからないので、印象も薄くなってしまうのです。結果、「何かで読んだ」「どこかで見た気がする」と思い出したり、引っかかりを感じたりすることも少なくなってしまいます。
 ちょっとややこしいかもしれませんが、こういうことです。
 「知的生産の素材をノートに集める」のではなく、「ノートに(ピンときた情報を)集めると知的生産の素材になる」と。
 このような仕組みになっているから、本書のやり方でノートを使えば、何かの仕事をしているとき、
 ・考えを進めるための足がかりになる
 ・新たな視点、切り口が生まれる
 ・アイデアや発想を思いつく
 ・思いついたことを成果物に活かす
といった効果が得られるのです。
(本書より P33〜P34)


■「ごちゃまぜ」だからヒントになる

 プライベートで集めた情報が仕事のヒントになる。
 こう言い切ってしまうと、疑問に思う人もいるかもしれません。
 もちろん「ピンときた」「おもしろい」と思った雑誌の記事が、すべて企画になるわけではありません。「何かに使えるのでは」と思ったものの、そのまま遠い過去の情報になってしまうことも多いでしょう。
(中略)
 では、どんな情報が知的生産に使えるのでしょうか?
 10年以上ノートを使ってきた経験から言えることは、「使えそうなものほど使えず、使えなさそうなものほど使える」ということです。特に「仕事には何の関係もないが、おもしろい」という切り抜きや考えごとのメモほどアイデアの芽になることが多い。
 過去のノートを見てみると、まったく仕事に関係のない情報がたくさんあります。しかし、じっくり見てみると、直接的には活かされていなくても、仕事で突き詰めていくテーマや問題意識を孕んでいたり、考える手がかりになるようなものがたくさんありました。だから、「使えるか、使えないか」は、ほとんど考えなくて大丈夫です。
 自分の感性信じて、「おもしろい」「かっこいい」「きれい」「かわいい」「ほしい」「やってみたい」「便利だ」「行きたい」というものを、どんどん書き、貼るようにしましょう。
 大事なのは、「幅広い情報」の中から「ピンときたもの」を集めることです。
 すべてはそこから始まります。
(本書より P44〜P46)


■ピンときたものから「良さの本質」を考える

 ノートに入れていくのは、自筆のメモや新聞記事の切り抜き、本のコピーといった「読める情報」とは限りません。
 たとえば、僕が今使っているノートには、よく動物や風景の写真が貼ってあります。貼った理由は、「美しい」「かっこいい」「好きだ」と思ったから。それだけです。好きな写真を貼っても、ノートを見たときにいい気持ちになるだけで、知的生産には何の役にも立たなそうに思える。
 ところが、そうとも限らないのが、このノートを使った方法のおもしろいところです。
 ピンときた写真を貼ること。その最大のメリットは、「良さ」の本質を考えられる点です。
(中略)
 他にも、かっこいいなと思った広告デザインを貼っておけば、商品を魅力的に見せる方法や、キャッチコピーが与える印象などについて、じわじわ考えが深まっていくことが期待できるでしょう。
 このように「@収集」の過程では、「これは素材になるから」と意識的に取っておきたいと思う情報だけでなく、「なんとなくいい」「なぜか気になる」というものも取っておくことが大切です。無意識が「これは使える」と言っている可能性が高いからです。
(本書より P179〜P180)


■自分の感性でつくったノートを信じる

 知的生産のために、ノートに情報を入れ、読み返したり、カードに書き出したりする。その作業は無駄だらけかもしれません。しかし、それでもやらないと成果物はできない。「何気なく歩いていたら富士山の山頂を登っていた」ということは絶対にないのです。
 ちょっとした発想は不意に得られることがあっても、アイデアや成果物は意思なくして得られません。
 このことについて書かれたちょうどいい文章があります。

 「ひらめきというのは、ひらめこうと思って生まれるものじゃない。計算機を使う作業からはひらめきは得られない。とはいえ計算作業も、いつかひらめきを得るためには絶対必要な作業である。
 だから、たとえばある社会学者が、いい年をして、何万問もの、まったく些末な計算問題に頭を使っていたとしても、彼にとって損はありません。だたし、彼が計算を機械に任せようとしたら、彼は罰を受ける。何か大した結果を出したいと思っても、結果は出ません。出るとしてもつまらないものでしょう」(『現代訳 職業としての学問』マックス・ウェーバー著・三浦展訳/プレジデント社)

 ひらめきにおいて「こうすれば確実に起こる」という理論はありません。しかし、それでも起こると信じて作業を続けるしかない。まるで「信じるものは救われる」という魔法のようですね。
 知的生産の素材として、他人が書いた本や資料に100%の信頼を置くのは難しいかもしれません。それでも、自分が「おもしろい」と思った情報だけを入れたノートなら、信じるに値するものになっているはずです。
 自分のつくったノートを信じて手を動かし続けましょう。
(本書より P208〜P211)


【関連書籍】





情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版]

1)本書の内容
 
 完全版の刊行にあたって
 はじめに
 第1章 ノートで「読書体験」をマネジメントする
 第2章 必要な本を指名買いする「探書リスト」のつくり方
 第3章 読んだ内容を財産にする「読書ノート」のつくり方
 第4章 自分をつくるノートの「読み返し方」
 第5章 読書体験をより充実させる20のアイデア
 付録 ノートづくりに役立つ文房具26
 おわりに

2)本書から学んだこと
 ・量が質をつくる!
 ・「ごちゃまぜ」だからこそヒントになる!
 ・自分の感性でつくったノートだからこそ、信じることができる!



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2014年02月01日

「スペシャリテ」を持つこと!これが全ての出発点!『1つ3000円のガトーショコラが飛ぶように売れるワケ』(氏家健治著)



片手に乗るくらいの大きさのガトーショコラが1個3,000円と聞いて驚かれる方も多いと思う。しかし、この特撰ガトーショコラが大人気なのだ。『食べログ』が選出した「ベストスイーツ2013」において、チョコレート店全国ランキング第1位となったのが「ケンズカフェ東京」、そう、冒頭で紹介した1個3,000円の特撰ガトーショコラを販売しているお店だ。

ケンズカフェ東京の特撰ガトーショコラ.jpg

「ケンズカフェ東京」のガトーショコラは高級感あふれる箱に包まれている。開けてみると、そこには美味しそうなガトーショコラが!実際に食べてみると、控え目な甘さと、しっかしとしたチョコレートの甘さがほどよく調和した味わい。非常においしい....ってグルメレポートか(^^;)

さて、本題に戻して、1個3,000円のガトーショコラを販売している「ケンズカフェ東京」のオーナーシェフ・氏家健治さんが
・ガトーショコラを販売する経緯
・ブランディング戦略
・マーケティング戦略
について述べられた本が、本書1つ3000円のガトーショコラが飛ぶように売れるワケである。

本書で注目したいのは、「なぜ、氏家さんが1個3,000円の特撰ガトーショコラ1本で勝負する考えに至ったのか?そして、『食べログ』のチョコレート部門で全国第1位を取るほどまでになったのか?」という点である。

実は、ケンズカフェ東京で扱っている商品は1個3,000円の特撰ガトーショコラのみ!「取り扱っている商品が特撰ガトーショコラのみ!」と聞いて、驚く方も多いのではなかろうか?「ガトーショコラ1つで本当に大丈夫?」と考えるのが一般的であろう。しかし、氏家さんの考え方は逆だ。「一つに集中するからこそ最高の商品を提供できる」のだ。

だが、集中したからといって簡単に特撰ガトーショコラ1本で勝負できるものではない。氏家さんが特撰ガトーショコラ1本で勝負できるように「特撰ガトーショコラを育て上げた」と言ってもいい。そのキーワードを一言で言うと「ブランディング」である。ブランドが確立したからこそ、特撰ガトーショコラは1個3,000円で販売でき、「ブランド」として確立した。

「ブランディング」と書くと、何か「本人が輝くために行なうもの」というイメージがあるが、氏家さんのブランディングは、あくまで「商品が輝くために行なうもの」という考え方で行なっている。その前提となっているのが「スペシャリテを持つこと」である。そんな本書に書かれている氏家さんの「スペシャリテ」に対するこだわりは並大抵のものではない。スペシャリテを極めていったからこそ『食べログ』のチョコレート部門で全国第1位を取ったのだ。「スペシャリテ」を持つこと......ここに成長し、継続するための基本が集約されているような気がしてならない。ブランディングもマーケティングも全て「スペシャリテ」があるからこそ成立する。

個人的には本書を読みながら『成功できる人の営業思考』(太田彩子著)を内容を思い起こしていた。成功できる人にはある共通の「思考のくせ」がある。それが太田さんがいう「営業思考」である。本書に書かれている思考は、まさに「営業思考」と共通する。その太田彩子さんが特撰ガトーショコラを「スペシャリテ」として氏家さんに提案したという話も興味深い。

本書に書かれていることは、「ビジネスとして成立し、成長させるためにはどうすればよいか?」というキモである。それは、飲食業界に限った話ではない。どの業界においても、ひいて言えば「個人」においても適用できる。興味がある方は是非ご一読を!


●「ケンズカフェ東京」公式ページ
http://www.kenscafe.jp/


【本書のポイント】

■評判の店が自滅するパターン

 ブレイクの予感がすると同時に、不安も頭をもたげてきました。
 「このまま1500円で売っていたら、いつか立ち行かなくなる。評判のラーメン店が潰れるパターンに陥るかもしれないぞ」と思ったのです。
 美味しいと評判で行列ができるラーメン店が潰れることがあります。
 たとえば、780円で美味しいと評判になったラーメン店があるとします。そして、なにかのきっかけでブレイク。お客さんが殺到して行列ができる人気店になったとしましょう。
 行列してまで食べたいという通をうならせるラーメンを作り続けるためには、それなりのコストがかかります。お客様が飽きないように味をどんどん進化させる必要もありますし、味を真似するライバルが出てきてもそれを一蹴するような仕掛けも準備しなくてはなりません。いずれにしても確立した味と評判を守るためにはお金がかかるのです。
 ところが、ブレイクしてからだと値上げはしづらいもの。最高のラーメンを提供するために850円に値上げしても「ちょっと売れるようになったら、儲けに走るのか」とあらぬ誤解を受けないとも限らないのです。
 かといってコストを抑えるために材料を落とすと味が落ち、ファンになってくれたお客様がは離れていきます。「あの店は昔は美味しかったけど、最近は味が落ちたからダメだね」という話、よく耳にしますよね。
 こうして人気が出たばかりに潰れてしまう飲食店は少なくないのです。
(本書より P27〜P28)


■ブランド化の大前提は他が真似できないクオリティ

 ブランド化やコーポレートアイデンティティなどと大げさに構えてしまうと、ロゴから作ることからはじまると誤解している人もいるようですが、真っ先に取り組むべきは商品力の強化です。
 多くのお客様からトップブランドとして認められるためには、なによりも商品力が高くなくてはなりません。
 商品力、すなわちクオリティこそ、ブランド力を育てる大前提となります。
 世のなかには無名でもクオリティの高いものはあります。トップブランドのみが高いクオリティを誇るわけではありませんが、クオリティの低いトップブランドは世の中には存在しません。
 私のガトーショコラは、他が真似できないダントツのクオリティの高さにこだわりました。他よりも「ちょっと美味しい」ではダメなのです。「ダントツに美味しい!」と感動してもらえないとトップブランドとはい呼べないと思うのです。
(本書より P55〜P56)


■スペシャリテがないと凋落する

 1品ビジネスで成功させるには、その商品が他にはないダントツの魅力を持つスペシャリテ(看板商品)である必要があります。
 1品ビジネスで限らずとも、企業が生き延びるためにはヒット商品が求められます。トヨタ自動車なら『プリウス』、アップルなら『アイフォーン』、またユニクロなら『フリース』『ヒートテック』というヒット商品を持っています。
 そんなヒット商品を私はスペシャリテと呼んでいるのです。
 スペシャリテを出せない企業は凋落します。私が大好きだったソニーは『ウォークマン』や『プレイステーション』といったスペシャリテを出しながら、それに続くヒット作が出ないゆえに凋落を続けています。
(本書より P114〜P115)


■忘れられないようにカンフル剤を打ち続ける

 SNSやメルマガを通じてこれらの地道な活動は、「カンフル剤」だと思っています。メディアに出て一時的に話題を集めたとしても、「そういえばあの店どうなったの?」と消費者から忘れられるお店や商品は無数にあります。
 それを防ぐために欠かせないのがソーシャルメディアやメルマガを通じたカンフル剤。ブログ・マーケティングもその一助になります。
 私がフェイスブックで近況報告をつぶやくと、それがきっかけとなり静かな小石を投げ込むと波紋が広がるようにケンズカフェ東京や特撰ガトーショコラに関するつぶやきが増えてきます。
 もしも恋人や子どもの誕生日が近づいているとしたら「プレゼントはガトーショコラでいいじゃない。ネットで1本注文しておこう」という人も出てくるでしょう。でも、それは副次的な効果。「カンフル剤」の狙いはあくまで覚え続けてもらい、思いだしてもらうことにあります。
(本書より P154)


■逃げ道を用意しつつのチャレンジ

 私は壁にぶつかって悩んでいる飲食店のオーナーさんから相談を受けることがありますが、そんなときは必ずこういう話をします。
 「『資金が心配だ』『人手が足りない』とか言い訳をして現状維持に苛まれていると、業績はどんどん右肩下がりになります。市場には常時、新規参入がありますし、ひとの心は新しい刺激を求めているからです」
 壁にぶつかっているなら勇気を持って変革の一歩を踏み出さないと、なにもはじませんし、なにも変わりません。走りながら頭をフル回転させて考えて、走りながら修正する人だけが、チャンスをものにして”化ける”ことができる。これは飲食業界に限らず、ビジネス全般に共通する原理ではないかと思います。
(中略)
「ひとつが失敗したらすべてが終わり」という一か八かのチャレンジは、ただの無謀になりかねません。きちんと逃げ道を作っておき、戻れる場所を用意しつつ、変革してみるべきです。もとよりアイデアがあるのに、リスクを恐れるがためにチャレンジしないのはもったいないです。
(本書より P184〜P186)


【関連書籍】



1つ3000円のガトーショコラが飛ぶように売れるワケ 4倍値上げしても売れる仕組みの作り方 (SB新書)

1)本書の内容
 
 第1章 なぜ4倍値上げしてもお客が増えるのか?
 第2章 今より高く売る! ブランドの育て方
 第3章 ブランド力の伝え方
 第4章 “ありがたみ"を形にするサービスブランディング
 第5章 究極の1品ビジネス
 第6章 スペシャリテ(看板商品)の磨き方
 第7章 ダントツのネット活用術
 第8章 どん底だから勝機は見えてくる
 第9章 正しいチャレンジのしかた

2)本書から学んだこと
 ・「スペシャリテ」があるからこそビジネスは継続する!
 ・ブランディングもマーケティングも「スペシャリテ」が出発点!
 ・逃げ道を用意しつつ、チャレンジを!



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